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その言葉に驚いたと同時に悠人はすぐ菜乃葉の顔へ近付いた。
キスをされると覚悟して、思わず目をギュッと閉じる菜乃葉の顔に刺激を与えたのは唇ではなくおでこだった。
悠人の被るキャップのつばが、菜乃葉のおでこに直撃したのである。痛みはなかった。
菜乃葉は帽子のつばをそのまま見つめ、悠人はバツの悪そうな顔でつばを上げて帽子を取るとそのまま菜乃葉の唇へ唇を合わせる。
「!!!」
もう少し後に行われると思われた突然の口付けに菜乃葉の動悸は高鳴る。
悠人の唇が離れると菜乃葉は赤面した顔で悠人を見つめる。
(心臓飛び出そう)
すると今度は何も言わず悠人が角度を変えて再び唇を重ねてきた。唐突な二回目のキスに菜乃葉は動揺するが、それ以上に悠人と口づけを交わせることが嬉しかった。
悠人の両手は菜乃葉の背中へとまわり、優しくも力強い手の感触が菜乃葉の鼓動を更に加速させる。
そして先程よりも唇の重なる時間は長かった。
普段より煩くなった心臓の音は一向に止まなかったが、菜乃葉の頭は心臓の音ではなく、目の前にいる悠人の事しか浮かんでこなかった。
(ああもうあたし完全に……悠人くんの虜だ)
二回目のキスが終わり余韻に浸るようにまだ顔の近い二人はそのまま互いの足元を見る。そして菜乃葉は小声で呟いた。
「昨日より長い……」
そう口にした菜乃葉に悠人はもう一度軽いキスを菜乃葉へするとすぐに離れて悪戯っ子のように舌を出して声を出す。
「だって菜乃葉がかわいいから。オレをその気にさせたよね」
そう言って菜乃葉のひらひら舞う顔周りの髪の毛を手に持って優しく梳いてくる。
そんな悠人に菜乃葉は目を合わせると悠人は優しい目をして菜乃葉に口を開いた。
「菜乃葉、さっきの言葉嬉しかった。オレも大好き」
「うん……」
それから悠人は菜乃葉の頬を愛おしげに触り、そんな悠人の右手を菜乃葉は両手で包み込むように掴んだ。
二人は互いに笑みを零し、幸せな時間が二人の間で流れていく。
この先もこの男の子と幸せに過ごしたい。
そんな事を心の底から願いながら菜乃葉は幸福すぎる初めてのデートを終えた。
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