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 スマホに設定したアラームよりも早く、ラインの新着メッセージを通知する短い振動音がブブッ、ブブッと虫の羽音みたいに耳元を嫌な感じでくすぐってくる。  枕元で充電しながら動画サイトを見ていて、いつの間にか寝落ちしていた頭には「相手にしたくない」女の顔が浮かぶ。 (由利ちゃんのほうがこういうこと、得意でしょ?澄子ねえ、お茶とか用意するの苦手だし、お当番とか好きじゃないからぁ)  苦手だとかいう問題じゃないし、当番で決まってんだからやれよ。 (飲み会、ドタキャンしたいなあ。こないだは断ったし……オゴリなら行きたいけどぉ)  知らねえよ、オゴリだって聞くと大酒飲んで騒いで、終電逃して、タクシー乗りまくって、翌日は二日酔いで無断欠勤するくせに。  罪悪感もなく、仕事中でもおかまいなしにどうでもいいことを相談してきたり、面倒なことは私が「見ていられない」性分だからやってくれるだろうってあてにしたり、うんざり。  無視すればラインはもちろん、スマホや会社のメールアカウントにまでメッセージを送ってくる澄子にとって、私は「検索サイト」や「お手伝いさん」だ。  自分で調べろよ、苦手とか甘えんな。  
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