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 いい大人で、しかも子供もいるくせに。  それぐらいは自分で決めて欲しい、本当にうるさい。  何回言ったかわかんないけれど、澄子はなんにも改めないし、ヘラヘラしてばかりで、申し訳ないとも感じていないみたいだ。  黒縁がくっきりとした、大きめのサークルレンズをしているせいか不自然に黒目を大きくさせて、ぱちぱちとわざとらしく上目遣いでまばたきをしながら私を見上げて「由利ちゃーん」と、私を呼ぶ。  はっきり言って、かなり痛々しい。  背中がぞわっと、毛虫でも這ったように不快な、むず痒さに襲われるぐらいに。  スマホのディスプレイを見たら、まだ朝五時じゃん……。  トイレに行きたくなるとか、雨とか雪とかで交通事情が不安定だから早めに出なくちゃとかいう場合を除いては、あと一時間うとうと、ふわふわと心地よい眠りを味わえる時間帯だ。  なのにどうしてこのタイミングで、ラインなんか送ってくるんだろう。  連続してブブッ、ブブッ、という振動音が絶え間なく続く。 (由利ちゃんなら理解してよ、澄子より頭いいんだから、ねえ)  したくないし、するわけない。  すっからかんで、考えることを放棄している澄子の気持ちなんか理解したくもない。
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