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序
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おらがおよめにいくときにゃ しろがねざいくのはなかんざし
ひめのまえざし おしろのひぃさんみたいなりっぱなかんざし
ぶんきんしまだのみぐしをかしげりゃ
しろがねきらきら
きらきらひかって
はらはらなって
うしろでほろほろおっとうがないた
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白銀村には、国にお殿様がいた時代から受け継がれてきた銀線細工という工芸品があって、村の娘は花簪を嫁入り道具に持たせてもらう。
「春鹿の花簪は俺がとっておきのを作る」
「やだよ。花簪なんてダサいもん。私は絶対、結婚式はドレスでダイヤモンドのティアラにするんだもん」
幼馴染とそう言い合った何年後かに、春鹿は結婚して、ティアラではなく花簪を日本髪に差した。
誰かの妻になる春鹿に、遠い故郷に残った幼馴染が作って寄越した銀細工。
きらきらと細やかに、軽やかに光る輝きの欠片は、早春の、晴れ嵐の日に舞う雪みたいに、きらきらきらきら、式の間じゅう、輝いていた。
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