#あの日の約束

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 ガラガラと音を立てて開いた扉の向こうは、日中の陽光に慣れた目にひどく暗く感じた。ゆっくりと焦点が合い始める。窓ひとつない四畳半ほどの空間。アンティークなランプで照らされた文机。そこに頬杖をつく人物がひとり。 「いらっしゃいませ」  和装とも洋装ともとれない黒服に身を包み、長い髪を後ろに結わい、整った顔立ちはどことなくカラスを連想させる。肌つやからして、僕と歳は変わらなそうだ。二十代後半くらいか。ひとりしかいないのだから、きっと店主に違いない。恐るおそるたずねてみる。 「探し物を見つけていただけると聞いたのですが……ここで間違いないですか」  若き店主は穏やかな笑みを浮かべ、目の前の椅子に手を差した。 「はい。ここでは、失くしたものを見つけ出すお手伝いをさせていただきます。どのようなものをお探しですか」  怪しげな雰囲気に警戒しながら、僕はおずおずと腰かける。 「指輪を探しています。一週間ほど前に失くしてしまったことに気づきまして。どこを探してもみつからずに途方にくれていると、知人からここを紹介されたんです」
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