400人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
私は真継様を、きっと睨み付けた。
「あなたはお母さんの仇。あやかしの敵」
真継様が懐に手を入れた。取り出した札を宙に巻く。落葉のように舞った札は、鷹や虎、大蛇に変化した。猛獣たちが一斉に私に向かって襲いかかってくる。
「キャアッ!」
思わず悲鳴を上げた時、目の前の空間にヒビが入った。
ヒビをこじ開けるように姿を現したのは炎華だ。
「遅くなって悪かったな、千代」
ちらりと私に視線を向けた後、炎華は猛獣たちに向かって手のひらを向けた。パチッとまばゆい光が爆ぜ、私は目をつぶった。直後に、どぉんと大きな音がする。
恐る恐る目を開けて見れば、廊下に大穴が開き、猛獣たちの姿は消えていた。焼け焦げ破れた札が落ちている。
「今度は、あんたを燃やし尽くしてやる」
いつの間にか、炎華の頭に角が生えていた。両手に炎が灯る。脅しの言葉に、真継様の顔から余裕の笑みが消えた。
「あの時、千代を助けられなかったことを、俺はずっと後悔していた。千代を、もうあんたの手には渡さない」
「たかが齢百年の鬼が生意気を言う……」
「これ以上、あんたたちがあやかしに害をなすなら、こちらにも考えがある。あやかしの力を舐めるな。一族郎党、滅ぼされたくなければ、今後一切、俺たちに関わるな」
「……異形め」
「あやかしたちの願いは、ひっそりと静かに生きて行くこと。お前たちが何もしないなら、こちらも何もしない」
炎華と真継様はしばらくの間、睨み合っていた。
最初のコメントを投稿しよう!