第1章 そうだ。福井に行こう!

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東京駅からの夜行バス乗り場で、今、あたしは一人で友達と待ち合わせをしている。 大学の後期が終わって長い春休みに入ると、大学は春期集中講義やサークル活動があるだけだ。この期間に、あたしは恋人の咲也と旅行を計画していた。行き先は、咲也が小学生の中学年から高二まで過ごした、福井県小浜市。海があって観光地もある小さな町だ。 そこに親戚がいるわけでもないけれど、咲也にとっては思い出の詰まった町でもある。あたしの知らない7年間。どんなふうに咲也が過ごしたのか。どんな友達がいたのか。 どんな思いをしてきたのか。 それを知るいい機会なのかもしれない。 あたしは、坂井光莉。1月で19歳になりました。大学は食物栄養学科。趣味は料理と剣道。服飾サークルに入っていたけど、剣道部に乗り換えました。やっぱり、あたしには体を動かすことのほうが合ってる。服飾サークルでは裁縫を学ぶことができたし、吸収できたことも勿論ある。いい経験だった。そしてみんながあたしの背中を押してくれて、あたしは剣道部に入ることにした。 あたしは身長160センチ。結構よく食べるけど、太ってはいないし、痩せてるほうだ。髪は肩甲骨くらいまで伸びて、パーマも取れかかってきた。 「これはこれで、ゆるふわで可愛いよね」 そう言ってあたしの髪を撫でてくれるのは、咲也だ。あたしは振り向いて咲也を見ると、 「あ、咲也!おっそーい!!」 と口を尖らせて言うと、咲也はフードファーのついた厚手のジャケットを着て、ブルージーンズ。
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