166人が本棚に入れています
本棚に追加
/477ページ
(この子どもの雰囲気が一番、妖らしいな》
無表情でなにを考えているのか分からなくて、薄気味悪い。同じ妖である晴太には懐いているようだが、妖の本性は残忍だ。ヒトに対して、どんな欲求を抱いているのか分かったものじゃない。夕聖はじっと見上げてくる子どもを軽く睨んだ。
(妖なんか山の中の隠れ里に引きこもっていればいいんだ)
目の前にのこのこ出てこなければ、夕聖だって手にかけずに済む。嫌悪感が伝わったのか、白兎のキツネ耳がぺたんとさがり、ふくらんでいたしっぽも力無く垂れた。
「僕、裏庭のお掃除してくる」
小さな声でそう言った白兎が、持っていたホウキをずいっと夕聖の手に押しつけてきた。夕聖は思わず受け取ってしまう。
「あのね、住むお部屋とごはんとお小遣いは働いたらもらえるの。ユキはお庭とお風呂の掃除するとよろこぶ」
白兎はうつむいて早口にそれだけ告げると、母屋の裏手へ駆け去った。
(……俺は妖の子どもに仕事を言いつけられたのか?)
夕聖はしばらくホウキを見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!