三章 1.夕聖とオオカミ

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(この子どもの雰囲気が一番、(あやかし)らしいな》 無表情でなにを考えているのか分からなくて、薄気味悪い。同じ妖である晴太には懐いているようだが、妖の本性は残忍だ。ヒトに対して、どんな欲求を抱いているのか分かったものじゃない。夕聖はじっと見上げてくる子どもを軽く睨んだ。 (妖なんか山の中の隠れ里に引きこもっていればいいんだ) 目の前にのこのこ出てこなければ、夕聖だって手にかけずに済む。嫌悪感が伝わったのか、白兎のキツネ耳がぺたんとさがり、ふくらんでいたしっぽも力無く垂れた。 「僕、裏庭のお掃除してくる」 小さな声でそう言った白兎が、持っていたホウキをずいっと夕聖の手に押しつけてきた。夕聖は思わず受け取ってしまう。 「あのね、住むお部屋とごはんとお小遣いは働いたらもらえるの。ユキはお庭とお風呂の掃除するとよろこぶ」 白兎はうつむいて早口にそれだけ告げると、母屋の裏手へ駆け去った。 (……俺は妖の子どもに仕事を言いつけられたのか?) 夕聖はしばらくホウキを見つめた。
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