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アサギは庭仕事はあまり得意ではないため、アカネに教えてもらいながら雑草を地面から剥がしていきました。しかし、引っこ抜いていい草と抜いてはいけない草との見分けがなかなかつきません。「それは引っこ抜いちゃだめ!」とアカネに三回ほど注意されてしまいました。
「アサギ君、お家でお庭のお手入れとかしないの?」
「うん。庭の手入れはいつも兄さんがしてくれるから……僕はお花の水やりくらいしかできなくて。アカネちゃんは慣れてるんだね」
「うんっ。アカネ、ここでいーっぱいお手伝いしてるもんっ」
「そうなんだ。今日で何回目くらい?」
「えーっとー……わかんない。学校がお休みでパパとママがお家にいない日は、いつもここに来てるから」
無邪気に笑うアカネは、実に楽しそうに雑草を握ります。もしかしたら、今日も家に家族がいないからここへ来たのかもしれません。それにしては少しも寂しそうに感じないのは、あの神父が理由なのでしょう。
微笑ましい気持ちになったアサギも、雑草に手をかけます。
「あの神父様、すごく優しそうな人だね。この庭を綺麗にしたらいっぱい褒めてくれるかも。頑張ろうね」
「うんっ。コハクにいっぱい褒めてもらおっ!」
やる気を出した二人は、懸命に手を動かします。
その様子を後ろから見つめるシスターは、「可愛いんだから」とアメジストの瞳を細めました。
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