ギラギラ・ウルフ

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「お兄さん、何か誤解をしているみてぃでねぇ」 「誤解?」 「そうでぃ、きっと、このネックレス全体がひとつの商品だと思っているんでねぇ?」 「――違うのかよ?」 「ちがうでぇ、(ひも)に玉が四十三個ついているでぇ。一玉三百円なんでぃ」  タカは、“詐欺師がターゲットを(だま)そうとする前に、今からこのようにしてあなたを騙します”と予告されたかのように、店主は冗談半分で言っているのかと思っていた。 「はいはい、分かりましたよ。ちょっと待ってよ……お、ちょうどある。はい、一万三千二百円ね」  タカはそう言って店主に代金ちょうどを手渡し、お釣りの一万二千六百円を期待した。 「はい、ちょうどでねぃ。ありがとぉうございやした」 「あ、あぁ……」  タカは仕方がないと納得しつつも、何か損した気持ちであった。  店主が買った商品を紙袋に入れている間、タカは財布の中にある現金の残高を確認していた。  すると少し離れた位置から、「やめろよ! たすけてぇ!」と陸の叫ぶような声が聞こえてきた。  タカは何事かと、慌てて声のする方角に目を遣ると、木製の車輪の付いていないトロッコのような乗り物の中に、陸は立って乗っていた。  トロッコは、ジョギングするような速度で出入り口へと進んでおり、陸はタカに向かって助けを求めていた。 「おい! リク! だいじょうぶか!」 「だいじょうぶじゃない! 早くたすけて!」  タカは慌てて宙を舞うトロッコを追いかけたが、トロッコは屋外へ出るとタカの手が届かない高さまで上がって、ゆったりとした速度のまま建物から遠ざかって行く。  タカはそのまま後を追おうとすると、「お兄さん! ちょっと待ちな!」と店主のおっちゃんが迫って来た。  タカはいったん立ち止まると、店主がこちらに来るのを待った。 「なんだよ! リクはどうなるんだよ!」 「――お兄さん、あの乗り物は『カイザー』って言うんでぃ。選ばれた人間は強制的に乗せられて連れて行かれるんでぇ。自分の意思ではどうすることも出来ないんだぁい!」 「なんだよそれ! リクはどうなるんだよ!?」 「――残念だが、もう戻ってはこれねぇです」 「なに言ってんだよ! 戻って来れないって、どういうことだよ!?」 「これからあの子は、『アルガル国』という所に行くんでぃ。そこで十年以上の厳しい修行を行った後、アルガル戦士隊として、侵略者から地球を守るという任務に、生涯を捧げるんでぇ」
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