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だけどこの先を白状してわたしの打ち明け話の内容が判明したら、やっぱり軽蔑されちゃうかな。わざわざ助けに行く必要なんてなかった、ずっとあの町で彼や他の男たちにされるがままでも別によかったのか。って呆れられちゃうかもしれない。
そう一瞬考えたけど。わたしが淫乱だからとか性欲が強すぎるから、なんて理由で汚いものを見るような目をこっちに向けてくるうゆちゃんって絵面が何だか上手く想像つかない。
そこまで究極私的なプライベートの部分まで腹を割って話し合ったことは当然ない。けど、わたしの想像だけで言うと。多分うゆちゃんは普通よりずっと性欲とか薄そう。
勝手な偏見だけど。生まれてこの方ずっと特に好きな男の人もいなさそうだし、生理的な欲求に駆られてやむなく自分を慰めたりとか男の人とあれこれする自分を想像してみたりとか。そういう経験もほとんどないんじゃないかな。
なんていうかただのイメージだけど。性的な複雑さや邪な欲求をまるで知らない子どもが健全さをそのまま保って大きくなった完成形がうゆちゃん、って感じ。
無論外から見てるだけでその人の本当の奥までわかるわけないから。そんなことない、って言われればそれまでだけど。
でも恋愛経験がほぼないのはおそらく事実だし。誰かと触れ合ったことも多分ない。性的な被害に遭ってやむを得ず抗えなかったことも、彼女の強さとこの性格を考えるとまずなさそうだから。
その上他人の考えや嗜好に偏見を持つようなこともしないタイプなので、わたしの打ち明け話を聞いて嫌悪感で顔を歪ませるとかより。
どっちかといえば宇宙からやってきた猫状態でただただぽかん、となってまるで理解できない。と呆然となるだけで終わるんじゃないかって確信がある。
理解できないならそれはそれでいい。共感が欲しいんじゃない、ただ聞いて欲しいんだ。
こんな忌まわしい自分を抱えて。この先わたしは、どうすればいいんだろう?
今はまだ大丈夫だけど。いつか強すぎる性欲と強烈な愉楽の記憶に支配されて。
どうしてもまたあれが欲しい、って欲求に駆られてそれしか考えられなくて、おかしくなって暴走してしまったら。と思うともう…。
「…いつも、今日はこれから『あれ』があるって思うと。吐きそうになるほど気持ち悪いし怖いし、気が重くて死にそうな気分だったし」
『あれ』で通じるかな。何をどうされてたか、実は細かい話は結局彼女としたことなかった。口にしたくなければ別にあえて話さなくていいよと言われたのに甘えてなんとなくそのままになっていた。
それももしかしたらいけなかったのかな。ある程度時間が経った段階で、誰かにきちんと打ち明けて。説明しながら自分の記憶や感情を整理するって段階はやっぱり必要だったのかも。
なら、多分それが今なんだろう。わたしが自分の身の上に起こった事実としっかり向き合う時が来たってことなのかもしれない。
「…毎回終わったあとは自分が汚く思えてこの身体が嫌で嫌でたまらなくて、ずっとシャワー浴びて何度も細かいとこまで全身洗って。それでも汚れが取れた気がしない。全然よかった、なんて思えたことないんだ。…それはもちろんそうなんだけど」
暗いし近すぎるから表情を見られることはない。それがわかっていても顔を上げていられず、うゆちゃんの肩に伏せるようにして寄せた。手のひらはまだしっかりと握られている。本当はこんな風に他人と密着するのなんて絶対苦手なくせに、わたしのためにじっと我慢してくれている。…優しいうゆちゃん。
わからないならわからないままでいて、と祈るような気持ちで早口に言い切る。
「でも。今の夢で思い出しちゃって。…わたし、あの最中は自分で思いたがってたよりもずっと、その。…愉しんでた」
ああ言っちゃった。とその瞬間猛烈な後悔と、もう隠さなくていい。って安堵がどっとわたしを襲う。
「ほんとに嫌なのに、すごく。…よくて。もっといっぱいしてほしいって感じちゃってたと思う。夢を見たのも、怖かったからとか嫌だったからならまだいいけど。…多分、あれを忘れられないでいるから。なのかも」
ぞくん、と身体の奥と入り口が震える。最低な恥ずかしいことを好きな人に白状してる。そう思うと。
…情けないしつらいのに、どこか昏い悦びも潜んでるような。みっともない汚れたわたしを、清廉なうゆちゃんの前に晒す。
理解されなくていい。ただ聞いて欲しい。わたしが、ただの被害者じゃないこと。もしかしたら無意識に陽くんや男の人たちに自分をそうさせるように仕向けて。こんなの嫌なのに、と渋々応じてるふりをして他人には言えない後ろ暗い快楽を享受してた、そういう共犯者だったんじゃないかって疑念を。
「…だりあ」
彼女は暗闇の中ではっきりとわたしの名前を呼んだ。それから、一向に動じた様子を見せない淡々とした声で事務的に質問してくる。
「覚えてる範囲でいいけど、わかったら教えて。…そのときって。薬物使われてた印象ある?」
「薬物?」
もっと罪深いわたしの話を掘り下げるのか、と思ってたところに思わぬ水を向けられて拍子抜けしながら首を捻る。
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