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皆が寝静まった丑三つ時。
10歳になった綱満はミシミシと床が軋む音で目が覚めた。
厠は綱満の床間とは反対の方向にある。
それに、周りの部屋には誰もいないはずだ。
こんな時間に足音がするのはおかしい。
綱満が、聞き間違いかと思った時、再び音がした。
どんどんと近くなる。
足をずる音とぜえぜえと荒い息遣いまでもが聞こえる。
そして、月明かりが障子に影を映し出した。
巨大な何かが部屋の目の前を通り過ぎていく。
こぶが身体中についているような凹凸のある体で、頭には鋭利な出っ張りがある。
人ではない何かがゆっくりと歩いていた。
やがて影はなくなり、音も遠くなっていった。
綱満は恐怖のあまり一睡もすることが出来ずに朝を迎えた。
朝になると皆が騒がしく、あたふたとしていた。
なんでも家の財宝が盗まれてしまったらしい。
綱満は夜の出来事を思い出す。
きっとアイツが犯人に違いない。
その日を境に、町中で盗みは多発した。
そして、皆が綱満と同じ化け物のような姿を見たと証言する。
「あれが鬼だ。恐ろしい形をしていた」
やがて、鬼と呼ばれたその怪物は財宝だけでなく、人の命までも奪うようになった。
終いには、堂々と集団で村に現れては、乱暴を繰り返すようになったのだった。
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