聖女が聖女を続けている理由(3)

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聖女が聖女を続けている理由(3)

 今日も聖女と相棒は旅を続ける。東へ西へ、ふたりの旅は風任せ。追放されることもあるけれど、おおむね旅は平和である。 「って、どうしてまだ旅が続いているんですか! おかしいでしょう!」 「さあ、次の国へ行くよ~。旅の最初の方でトラブった国の様子見と必要ならフォローもやりたいなあ」 「どうして。どうして想いを告げたのに清い関係が続行になるんですか!」 「えー、なに? ルウルウ何か言った?」 「そもそも難聴系ヒロインとかじゃないでしょう、あなた! 旅の途中は幼竜形態をお願いされるなんて意味がわかりません」 「だってダニエルさまモード、眩しすぎて目が潰れるんだもん。成竜モードだと歩きでの旅は不向きだし」 「成竜モードで、ささっと空を飛んだらいいでしょう!」 「えー、この間酔って気持ち悪くなったし……」 「お酒はあんなに飲めるくせに!」 「それとこれとは関係ないじゃん」  竜は急上昇急降下も気にならない。一応背中に乗せているキャシーに気を使ってはいたものの、そもそも三半規管があまり強くない彼女には快適な空の旅とは言い難かったようだ。 「そんな……」 「やだ、ルウルウ泣かないで。ルウルウが泣いているのを見ると、私も胸が苦しくなるよ」 「じゃあ、幼竜モードで抱っこされるのではなく、人間形態でわたしにあなたを抱かせてください」 「却下」 「本当になんなんですか、あなたは!」  くすくすと笑いながら、キャシーは思う。もともと、「H(恥ずかしい)P(ポイント)」などというわけのわからない代償を求めた女神さまは、こんな風にみんなが笑いあう姿が見たかったのではないだろうか。  心の中に重石のように沈みこむ秘密を取っ払い、心から愛する者と過ごせるような、そんなささやかな幸せを自分たちに与えたかったのかもしれない。  それにしては言葉が足りなすぎるような気もするが、そこは神もまた完璧ではないということなのだろう。  そしてそのことを、キャシーはみんなに教えてあげたいのだ。余計なお世話なのかもしれないけれど。 「さあ、さくさく歩くよ! 夜までに国境を越えるからね~!」 「はあ、もう好きにしてください」  賑やかなふたりの声は、いつまでも山道にこだましていた。
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