証人欄

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 感謝はすごくしているのに、大した恩返しができていないうちにまた別の部署への異動命令がきてしまった。  その職場での最後の日、職場の方一人一人からメッセージカードを貰い、そのうえみんなでカンパしあって仕事で使えるような鞄をプレゼントされてしまいました。私は涙をこらえるのに必死になりながら、感謝の言葉と別に行っても頑張ることを言い、いつもより長い時間深く深く頭を下げました。 すごくびっくりしたんです、いつもは午前中に仕事を終えて帰ってるはずのパートさんたちが夕方の時間帯に職場に再度集まってまでそういうことをされたものですから。 「あぁ、やっぱり優しくて暖かい人たちに囲まれてたんだな、なんて幸せ者だったんだろう」と率直に思いましたし、今もその鞄は仕事先に欠かせない私のお守りのような大事なものになりました。  みんなからもらったメッセージカードもいまだに大事にとってあります。一人一枚で書いているようでしたが、上司だけ二枚になっていました。 ○○(苗字)さんへから始まったそのメッセージカードは、上司らしい内容で一枚、二枚目はまるで本当の母親のような文面で構成された挙句、最後の行には「△△(下の名前)行ってらっしゃい!頑張れ!」と書かれていました。家に帰ってから読んで正解でした。その晩はとにかく嬉しくて嬉しくて涙が止まらなかったんですから。  そんなこんながあった前職の上司に、事前に婚姻届の証人欄をお願いしました。その時のLINEの返事では「私でよければ♪でもそんな大役、私でいいんかなー」なんて上司がおっしゃったわけですが、嬉しさ抑えて文章書くのに少し時間がかかってしまいました。 「○○さん(上司の苗字)だから頼んでる節あるので、大丈夫ですよ。お引き受けくださってありがとうございます。」  後日、書き損じのことも考え、婚姻届二枚に書いていただきました。そのうちの一枚は役所に出してしまってないわけですが、出さずに済んでしまったもう一枚はメッセージカードと一緒にしまってあります。
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