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人の気配を感じて、顔を上げた。
俺等の部屋に上がり込んでくる奴の影。
邪魔な第三者に柄にもなく苛ついて、併せてこれ以上ヤったらまずかった気持ちもあるから、止めるきっかけになった事に安堵の息が漏れる。
ゆらりと身体を起こす間に、
ガラガラッと音をたてて扉が開く。
そこに立った伊澄は、冷たい瞳で俺を見下げた。
「さっきからうるさい」
「鳴いてたのはハルちんだよ」
「お前だよ。汚い声出しやがって」
浴衣の袖を捲った伊澄はそのまま足を進めると、自身の手をお湯に付けて持っていたシャンプーの容器から手のひらに液体を取り出す。
湯船の縁に全裸で腰掛ける俺は無視して、桶で掬ったお湯をゆっくりハルちんの身体にかけ、肩から下へと泡立てた手を身体に這わせる。
「……」
…右手の拳は赤く擦り剥けていた。
泡が染みて痛いと思うんだけど、ピクリとも表情を変えない伊澄は、丁寧にハルちんの身体を泡で埋める。
「なにプレイ?」
「散々汚しやがって。ハルが壊れたらどうすんだよ」
「壊れないよ。鳴いて喜んでたから」
俺の言葉に手を止めてこっちを見た伊澄の目はやっぱり冷ややかで、笑う俺に眉を寄せる。
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