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大江山に入った頃、真白は走るのをやめた。
それでもスピード感のある歩みだが、うっかり舌を噛んでしまいそうな勢いはなくなった。
それにしても、あんなに全速力で街から山まで走り、おまけに成人女性を一人抱っこしているというのに息が乱れていない。
…鬼の体力すごいなぁ。
下半身の耐久力も凄いんだろうなぁ。
真白もヤる時は凄いのかもしれないなぁ…ポワーン…って想像してる場合じゃない。
「あの、真白?ここまで来ちゃってるんだけど私も今すぐ帰らないといけない事情があるんだよね。だから」
「巻き込んでしもて悪いけど酒吞童子様が来られるまでは帰せへんよ」
「えーっ!?だ、だって本当に二日もいられないんだってば」
「酒吞童子様が来られはったら彩羽はすぐ帰ってもええよ。囮として連れてきただけやからな。呼ばれてはるん酒吞童子様だけやし」
「え。そうなの?なんだ。じゃあ私は部長と入れ替わりで帰っていいんだね」
「まあな」
なぁんだ。じゃあそんなに焦ることなかったじゃん。
不安から解放されると余裕が出てきて、私は鬼門がある馬場園の館まで、真白の下半身の耐久性はいかほどなのかという想像をしては頬を緩ませていた。
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