71人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ
「前におっちゃんに言われたのを思い出したんだ。好きな女にはかっこつけずにちゃんと向き合えってさ」
それは、私がずっと聞きたかった言葉だった。
「期限、決めた方がいい?」
不安そうな、心もとない表情。いつものナオキからは想像がつかないものだった。私はナオキに近づいて、ナオキの腰に腕を回すとそっと身を寄せた。私のなのか、ナオキのなのかわからない、心臓の鼓動が大きく響いていた。
「どうしようかなあ――」
思わせぶりに言ってみたけれど、ナオキの顔を見上げたら自然と笑顔になった。
「ううん。決めなくていいよ。ずっといてほしいから」
正直な気持ちだった。ナオキの前で、今さらかっこつけたり、本心を隠したりする必要なんてないじゃない? 私の一番いいところも悪いところも、ずっと見ていてくれたのはナオキなのだから。
ためらいがちにナオキの顔が降りてきて、唇と唇が重なった。長くて優しいキスだった。
「ずっと、こうしたかったんだ」
熱に浮かされたような眼差しで私を見ながら、ナオキが言った。
「ずっとって、いつから?」
「初めて会った頃から」
ナオキは、私の頬を右手で優しく触れながら答えた。
「それなら、もっと早くこうしてくれたらよかったのに」
最初のコメントを投稿しよう!