War12: Jealousy and Sin

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 奏はその一文を見るなり動きが停止した。どこからどう見ても"キス"の文字が見えるけれどちょっとした冗談のつもりで言ったのかもと一応聞き返してみる。  「やるってー…まさかこれ!?」  「そう!実はまだ今までキスシーンしたことなくて上手くできるか不安で手伝って欲しいんだ」  こんな静かな二人だけの空間で聞き間違えるはずはない。朔の言った言葉を頭の中で理解しようと数十秒フル回転させた。  「えっとー…ああ!やるフリでって、、事だよね?それくらいなら大丈夫」  「それじゃ練習にならないじゃん、実際にしないと。本番でNGにならないようにするのが練習なんだから」  「あっいやでも俺、男だしさ……」  「奏はキスの経験はどのくらい?1番最近キスしたのはいつ?」  そんな質問に唐突にされて躊躇う奏。思春期の10代の男子の会話としてはよくある話だけど今はこの状況。それに最近キスした話なんて思い当たる節はあるけど、、本当の事なんて口が裂けても言えない。  「えっと、、デビュー前。もう忘れるくらい前の話だし相手はー…女の子だし」  「やっぱ男だと嫌か。それか男だからじゃなく俺だから嫌?」  その言葉に何か悟られてるんじゃないかと目を見開いて朔を見てしまった奏。首を捻って返事の言葉を待っている朔から少し威圧感を感じる。  「ち、違うよ。誰とか関係なくいきなりキスシーンやろうなんて言われたら驚くじゃん!」  「あー良かった!でもさ、いつか奏もそういう現場が来るかもしれないよ。その時にできませんなんて言うの?代わりはいくらでもいるアイドルの世界でやってくならどんな仕事も受けないと」  「……そうだね。ごめん、、」  「謝らなくなくていいよ!こっちこそいきなり変なお願いしてごめん。やるフリだけでいいからさ!それだけでも雰囲気は掴めるし」  朔の目はいたって真剣で与えられた仕事に対してのストイックに向き合っているからこそ出た言葉だと思った。手にしている台本もすでにたくさん読み込んだと思われる書き込みがいくつもしてあった。  「、、うん。それでやってみる」  「奏ありがとう」  二人は台本を読んでそれぞれの役の短いセリフ暗記する。朔は自身の男子高校生の役をそのまま、奏は朔に告白される女子高生の役だ。  設定は朔がずっと思いを寄せていたクラスの嫌われ者の女子クラスメイトが体育の授業の時間に倒れ保健室で休んでいるところに行き、話の勢いで告白してしまうとシーンだ。  ふぅ〜と一呼吸をし気持ちを落ち着かせると朔がスタートの合図をした。  "具合どう?"  "もう大丈夫。軽い貧血だったみたい。もう教室戻るから"  "嘘つけ。クラスの女子にボールわざとぶつけられたんだろ?"  "知ってるなら早く教室に戻ったほうがいいよ。私といるとそっちまで嫌われる" 朔に合わせて奏も台本通りに初めてで慣れないセリフをぎこちなくも感情を入れて声に出す。 "それでもいいよ。オレは学校全員に嫌われてもいいから一緒にいたい"  "何言って……行かないから私が先に、、" ここで台本はベッドから体を起こした女子の肩を掴んで押し倒すと書かれていて、その通りに朔は目で合図をして奏の身体を押してソファーに倒した。   "オレさ。ずっと奏の事が好きだった"
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