第十九章『“風の王”飛竜ヴィエンティアラ』

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その不安を読み取ったかのように、飛竜はドクオへと長い尻尾を振るう。 ドクオは咄嗟に長剣で受け流すが、続けて飛竜は身を捻り、空中へと舞い上がりながら尻尾を振り上げる。 先程の尻尾振り回しよりも明らかに強烈な、回転尻尾攻撃に、ドクオは辛うじてタイミングよく弾くことに成功するが、衝撃で大きく押しやられる。 (;'A`)(ッ…!反動で動きが…!!) 押しやられた反動で動きが止まったドクオへと、飛竜が後ろ脚で蹴りを繰り出す。 大振りの短剣のような鉤爪がドクオへと迫る。 だが、ドクオと飛竜の間にショボンが割り込み、飛竜の爪を大盾で防ぐ。 更に、その飛竜の背後では、ブーンが垂れた尻尾へと大剣を振り下ろす。 ( ^ω^)「おらっ!尻尾置いてけ!!」 衝撃波を伴う単発剣技、ドラゴンファング。 当然だが、切断には至らず、しかし、尻尾の鱗を弾き飛ばす。 (;'A`)「サンキュー、ショボン、助かった!」 (´・ω・`)「良いってことよ。それよりーー」 ショボンは振り返らずに、飛竜を見据えたまま、応える。 その視線の先で、飛竜は周囲の三人を押し退けるように、空中で尻尾を振り回し、薙ぎ払う。 ブーンは大剣で受け流し、ショボンは大盾で防ぐ。 ドクオはショボンの背後に居た為に、届かない。 飛竜が尻尾を振り回し終えたところに、クロハとモララーが攻撃する。 クロハは獣化して身体能力を底上げし、跳躍から、両手持ちにした大刀で回転しながら斬撃を叩き込む。 モララーは、ブーンの反対側から、尻尾へと両手剣を振り下ろす。 対して飛竜は、火の息を溢し、煩わしそうに周囲を火炎で薙ぎ払う。 二度の火炎薙ぎ払いを行い、一度目は自身の左側180度を二度目はその反対を火炎で燃やす。 ショボン以外は範囲に逃れるように回避して難を逃れ、ショボンは火炎を大盾で防ぐ。 飛竜の周囲の地面は炎上し、近寄ることが出来ない。 それを良いことに、飛竜は燃え上がる焦土の上で、何ともない様子で火の粉と共に大きく息を吸い込むと、離れているショボンへと火球を放つ。 ショボンの目には一瞬、炎が渦巻いている様子が映った。 (#´・ω・`)(ーー何かヤバいッ!!) 危機感を覚えたショボンは、大盾を構えつつ後退する。 飛竜が吐き出した火球は飛距離が短く、ショボンが立っていた位置を通過することなく、地面に直撃して爆ぜる。 ーーそれと同時に炎が収縮し、渦巻く火柱が巻き上がる。 それは最早、炎の竜巻と形容しても良い。 それを目にしたショボンは固唾を飲み込む。 もし、正面から今の火球を盾で防ごうとしたらーー。 この渦巻く炎の竜巻に飲み込まれ、焼き焦がされていただろう。 だが、炎の竜巻は持続力が短いようで、すぐに拡散し、霧散する。 それと同時に、飛竜の周囲の炎もようやく収まるが、飛竜が飛び上がる。 低空飛行で滞空し、狙いを定める。 精密且つ迅速な飛行能力で、瞬く間にショボンに距離を詰め、側面に回り込む。 幾らこの飛竜が細身とは言え、十メートルを悠に超える巨体でこれほどの機敏な動きが出来るのかと、ショボンは肝を冷やす。 飛竜はショボンへと火球を吐き出す。 それも一度に留まらず、二度、三度と繰り返す。 三発の火球の内、二発はショボンの左右に着弾すると、渦巻く炎の旋風(つむじかぜ)となって逃げ場を無くし、最後の一発が地面に着弾して炎の旋風となり、正面から襲い掛かる。 (#´・ω・`)「ッーーこうなったらッ!!」 ショボンは大盾を構え、炎の旋風を迎え打つ。 三つの炎の旋風はその場に留まらずに通過するが、後には炎に焼き焦がされ、渦巻く風に切り刻まれた無残な地面が残る。 その上で、ショボンは炎上したまま、立っていた。 否、その姿は、炎上しているのではない。 ショボン自身、身に纏う鎧そのものが赤熱し、燻り、火を帯びていた。 ショボンの固有技能、残火の剣。 それによって、ショボンは炎のダメージを抑えつつ、旋風を大盾で受け流していた。 そして、ショボンの纏う燻りは、その手に握る長剣へと伝わり、その刀身を赤熱させる。 (#´・ω・`)「食らえーー!!」 ショボンは力強く右足を踏み出し、低空飛行で滞空する飛竜へと長剣を振るう。 単発の袈裟斬りーースラント。 刀身が届かない、離れた位置だったが、ショボンの赤熱する長剣は、剣技と同時に燃え上がり、炎の刃を飛ばす。 それは不意打ちのような形で飛竜に直撃し、爆炎が炸裂する。 (´・ω・`)「チッ、やっぱ、炎は大して効かねぇか。まあ、問題ない」 黒煙が晴れ、あまりダメージは見受けられない飛竜だが、ショボンの狙いは気を引く事だった。 ショボンの思わぬ反撃を受け、釘付けになった飛竜へと、無数の矢が直撃する。 突き刺さり、貫くことは無いが、鱗や甲殻を削り、確実に傷を刻み込む。 更に、その射撃を起点に、ツンが飛竜へと詰め寄り、尻尾を足場に駆け上がりーー。 ξ ゚⊿゚)ξ「これでどう?」 背中まで辿り着くと、その背中の甲殻の隙間、鱗と鱗の間に、右手の短剣を突き立てる。 背に乗られ、その上、短剣まで突き立てられた飛竜だが、明確にツンへと意識を向け、振り落とそうと空中で暴れる。 ξ ゚⊿゚)ξ「ッ!!」 大きく翼を羽ばたかせ、激しく動き回る。 ツンは突き立てた短剣を握ったまま、振り落とされないように必死にしがみつく。 (*゚∀゚)「大人しくしてろよなッ!!」 ツンを支援するべく、ツーが空中の飛竜へと無数の投擲短剣を投擲する。 ドクオが使用していたものと同じ、つらぬきの投擲短剣だ。 竜種特効効果は無く、またダメージは低いが、竜鱗の上からでも確実にダメージを蓄積させる。 ミセ*゚ー゚)リ「わたしも続くよっ!!」 それに続いて、ミセリも風を収束させ、無数の風を刃と成し、短剣より放つ。 収束・圧縮された烈風の刃は、無数の“線”となり、飛竜へと襲い掛かる。 飛竜自体が風の使い手と言うこともあり、ダメージは期待出来ない。 だが、ダメージは浅くとも、衝撃は与えられているはずだ。 衝撃は体幹を揺らし、体勢を崩させることに繋がる。 飛竜は相変わらずツンを振り落とそうと暴れ回る。 慣性でツンを引き剥がそうと、飛竜は僅かに上昇した後、急降下して地面に勢い良く着地する。 ξ#゚⊿゚)ξ「ーーっうぅッ!!」 どうにか耐えたが、ツンにも限界が近付きつつある。 次は耐えられそうに無い。 だが、その瞬間。 飛竜が着地したタイミングで、ドクオが飛竜に攻撃する。 剣では無い。 ドクオは、腰の後ろに手を回し、そこに取り付けていた棒状のものを手に取る。 それは、尖端が鋭く尖った短槍のようなモノ。 それを握り締め、着地した飛竜へと投擲する。 (#'A`)「これでーーどうだッ!!」 その短槍は、飛竜の後ろ脚へと直撃しーー。 赤黒い爆発を起こす。 《竜撃槍》と言う道具であり、一度限りであるが、竜鱗を無効化し、竜種に大して甚大なダメージを与える。 これもまた、ハインに支給されたアイテムであり、ドクオに託されたものだった。 短槍のような大きさ、長さも相俟って、一度に携帯できる数は三つまでだ。 巨体を支える脚部にダメージを受け、更には蓄積した衝撃も合わさり、飛竜は転倒し、再び大きな隙を晒す。 飛竜が転倒した事で、ツンは飛竜の背から飛び降り、そのまま畳み掛ける。 研ぎ澄まされた刃のような、薄い爪が並ぶ翼へと、エンチャントで龍属性を帯びた短剣による剣技と、竜傷力を持つ闘技を叩き込む。 幾つかの翼爪が折れ、翼膜が裂ける。 続けて、クロハの剣技、ドラゴンクロウズが飛竜の頭部の鱗と頭殻を砕き、角を叩き折る。 ブーンは無防備な尻尾へと、剣技、ドラゴンバイトを叩き込む。
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