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我先にと封を開け、文面を眼圧で把握するルイディ。
手紙を一読した彼は唖然とするばかりだった。
それもそのはず、最後の一文字までも俄かに信じ難い内容だったからだ。
『12月25日午前3時、吸血鬼の秘本をいただきに参る。
ただ、私はこれまで入念に計画を立てては、幾度となく挫折を経験してきた。
そこで、自信を失った私は今回、協力者を募ることに決めた。
どなたかに展覧室から吸血鬼の秘本を持ち出し、
私の待つ館35階の窓際まで運んでもらいたい。
報酬は後日、10万ドルをお渡しするのでご安心を。
それでは、健闘を祈る。
怪盗ビギナー』
怪盗ともあろう者が警察側に助けを乞うことがあっていいはずがない。
常識破りの激震を押し殺し、ルイディは冷静に分析する。
「まさか怪盗ビギナーが警察関係者でしたとは……」
真実を射抜く推理に一同がざわめいた。
現場の指揮を任されているダグ警部は制帽を被り直し、
どうにか平静を保とうとする。
「どういうことだ?」
「この館に盗聴器が仕掛けられていなければの話ですよぉ。
何せ私がアドバイスした途端、反省文が予告状に変わりましたからぁ」
犯人を炙り出すために敢えて、ルイディは怪盗ビギナーの行動を貶したのだった。
物怖じしない眼球が警備隊全員を隈なく眺め回す。
わざわざ手間暇をかけて反省文を書くビギナーは
素直な性格と見て間違いない。
忠告が犯人の耳に入ったならば、
必ずや言った通りに予告状を送ってくると睨んだのである。
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