調剤薬局にて

1/1
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

調剤薬局にて

 私の隣では、排便に難のあるご婦人が薬剤師と念入りに話をしている。  便が緩くて止まらないのだと言う。夜中に10回は起きてトイレに行く。頻尿とは全くタイプの違う『不眠と漏れ』の恐怖に憔悴(しょうすい)しきっているようだ。  話し方の様子から、そう伝わるものがある。  何らかの治療を別にされており、その際の点滴による水分摂取過多なのでは? とご婦人は推測する。  ご飯も粥状のものだったから、なおさらだったのではとも続けていた。  薬剤師は、それもあるかもしれませんとし、成分調整された下痢止めを支度、説明。  変化がみられたら、再度調整ということとなった。  夕食を粥状のものから変更するとか、夕食に汁ものは避けるようにするとか、夕食の配慮について話が進んでいった。  私は大衆と同様スマートフォンをいじっていた。  隣の話は大いに耳に入ってきてはいたが、ついたて向こう、顔も分からず詳細も分からず、プライバシーのこぼれ方について思考してみる。  するとここで、会話泥棒の起動。 『夕食についてのレシピを探してますか?』  でた、盗み聞き。  偉そうに言える立場ではないが、グーグルさんには関係のないことだし、私の声ではないものを拾った。  与えられた仕事をこなしたいのだろうけど、私のことをもう少し考慮してほしい。  何しろ私は、明日の朝から市の検診なのだ。  絶食なんだー!  夕食のレシピだって?  消化の良い具なし蕎麦、以降は水!
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!