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「おっ、起きてたのッ」
朝比奈くんの大きな瞳がパチリと開いて焦る私の顔を見据えた。
「先輩の熱い視線を感じて···、起きるタイミングを逃しました。」
私の焦った表情に朝比奈くんはフッと薄い笑みを浮かべた。
「熱い視線なんか送ってないわ」
綺麗な寝顔に見惚れてたなんて、言えない。
「では···僕の気のせいでしたか···」
朝比奈くんは落ち着き払った物言いで、私の心の内を見透かすように見つめてくる。
「き、気のせいよ」
その綺麗な瞳で見つめられると、ボロが出そうで思わず目をそらした。
「····フッ···もし次、僕が眠ってたら遠慮なく起こしてもらっても構わないですよ。」
「遠慮なんてしないわ。
今度さぼってるの見つけたら、そうね···。お仕置きでもしようかしら?」
彼に翻弄されっぱなしの私は、負けじと悠然とした態度で言葉を投げ掛けた。
「お仕置きですか···僕は痛いのは苦手ですが、先輩になら受けてもいいですよ。」
しかし、それは逆効果だったようだ。
朝比奈くんはお仕置きという言葉に嬉しそうに反応している。しかも、「先輩のお仕置き··待ち遠しいですね」と、楽しみにまでしてしまってる始末だ。
結局、私の形勢逆転は叶わず···───
「馬鹿なこと言ってないで、ご飯買ってきたから食べるわよ。
牛カルビ弁当と鮭弁当どっちがいい?」
話の節を折って、白旗を上げた。
「じゃあ、カルビ弁当で」
私が朝比奈くんにカルビ弁当を渡すと、朝比奈くんは「ありがとうございます」と素直にそれを受け取った。
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