ステイホーム・ランドセル

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ステイホーム・ランドセル

 やぁ、こんにちは。僕の名前は橋本 アキラ。僕の小学年生から、中学生までの話、是非楽しんで行ってくれると嬉しいな。 【小学校の教室】 「え!お前ヘラクレスオオカブトもってんの!?」 という大きな声が、教室中に響き渡った。控えめに言って近所迷惑だ。 そしてみんなも、「えーすご。」や、「今度見せてよ!」などと言い始め、教室の中が一気にざわつき始めた。 「そうだ。みんな、すごいだろ!」 同級生の田中こうた。 田中は自慢げに鼻をふふんと鳴らす。 田中はクラス、いや、学校一変な奴だった。 人と話すときに、なぜかよだれを垂らして息が荒くなっていく。 そんな奴だった。 すると、当時ガリ勉だった岡田が、口を開いた。 「田中、何言ってんだよ。ヘラクレスは外来種だから日本には滅多にいないん     だ。売ってたとしても三万円ちょっとはするし、それに…」 と,田中を論破し始めた。 「ちょ,ストップ、ストップ!ネタバレ早いって!」 と,クラスで一番女子にモテている、鈴木 たかしが岡田を止めた。 そんな他愛のない会話をしていると、教室の扉が開き先生が入ってきた。 「はい、ホームルーム始めるよー!みんな席座ってー!」 『はーい』 みんなが席に着いた。 「ホームルームを始める前に、少しだけお話があります。」 賑やかだった教室が、先生がその一言を放った途端に、虫の飛んでいる音が目立つくらい静かになった。 「この教室のゴミ箱に、”三人分の宿題”が入っていました。」 あんなに静かだった教室が、一気に騒がしい教室へ変わった。 クラスメイトの口からは、このような言葉が聞こえた。 「宿題を捨てそうな人と言ったらねぇ…」 「まーねー。しかも三人分…」 そしてそのような発言を切り裂くように、先生がそう言った。 「ねぇ、アキラさん、たかしさん、田中さん、君たちでしょう?」 先生の言う通り、僕たち三人が捨てたんだ。 あー。終わった。そう思った時に、誰よりも先に田中が話し始めた。 「先生、ごめんなさい。僕たちがやりました。」 あーあ。言っちゃった。これはもう言い合いする覚悟で放課後に教務室へ行くしかない。 「そうです。僕たちがやりました。でも、理由はちゃんとあるんです。」 僕とたかしが言うと、先生は 「理由?」 と呟いた。 「はい、理由は宿題をやりたくないからです。なぜ、昔は宿題がなかったのに、今は宿題があるんですか?先生なら答えられますよね?」 僕が言った。 「宿題は未来につながるんですよ。アキラくん。」 岡田が口をはさんできた。 「そうですよ。岡田さんの言う通りです。」 放課後、僕とたかし、田中は先生に職員室へ連れて行かれた。  下校時に、たかしが言った。 「はぁ、なんで宿題しなきゃいけないんだよ。」 『めんどいよね。』 僕とたかしが言った。 三人でいろいろ考えた。ゴミ箱に入れたらすぐバレる。今日で確実に決定した。もちろん家でも試してみた。宿題のプリントや計算ドリル、漢字スキルなどだけをわざとおいて帰ろうとしても、学級委員長の女子にすぐバレて先生にチクられる。 みんなは僕たちに 「なんでそんなに宿題したくないの?」 と、言ってくる。その通り、宿題なんて見たくもない。 そこで田中が呟いた。 「ひみつきち」 「そうだ!それだ!秘密基地!秘密基地をこの三人で作ろう!」 たかしが言った. 僕と田中はそれに賛成した。 そして僕たちは、秘密基地を作ることになった。 僕たちは明日、秘密基地を作るために家から色々な道具を持ってくる約束をし、今日はおとなしく三人とも家へ帰り、秘密基地の計画を立てた。  次の日の朝、学校のトイレに三人で集まった。 「秘密基地、どこにする?」 田中が言った。 「うーん。」 数分間僕たちは悩んでいた。 しばらくしてから僕が言った。 「あっ!山奥にちょっとだけ古いけど、よくできた家あったよな?あそこで  いいんじゃない?確か誰も住んでなかったと思うし! それにあそこなら宿題隠してもバレないし!」 「いいじゃん!」 たかしが言った。 「それいいじゃん!」 田中が言った。 たかしによると、僕が言っていたその家はたかしのおばあちゃんが住んでいたが、死んでしまったらしい。 「だから、お父さんに好きに使えって言われてるからそこ使おう!」 たかしが言っていた。 「オッケー!じゃあ、そこにしよう!」 僕がそう言った。 「よし、場所は決まったな。」 田中が言った。 その時、ホームルームが始まる時のチャイムが鳴った。 「あ!やべ!早く行かないと怒られるぞ!」 僕たちはそう言って、廊下で競争をしながら教室に戻った。 走ったけれど、やっぱり間に合わなくてニ、三分遅れてしまった。 でも、僕たちが席について三分くらい遅く岡田が 「すみません。トイレに行っていて遅れました。」 と言って席についた。 その時は秘密基地の事で頭がいっぱいで岡田のことなんて考えていなかった。 その時、僕がもっと前に気付いていれば…きっと、あんなことにはなっていなかった。 ま、あしたから春休みだし、いっか!  そんな時、五時のチャイムがなった。 「あ、五時だ。じゃあ、僕帰るね。門限あるし、今日は図書館に行って勉強してたって言い訳するよ。じゃあね。」岡田が秘密基地から出て行った。 「うん。じゃあなー。たかしは帰んなくていいの?」 僕がたかしに言った。 「あ…俺も帰る!じゃあね!!」 慌てた様子でたかしも帰って行った。 「うんうん。じゃあねー」僕がたかしに手を振る。 「じゃ、僕も帰ろうかな。田中、一緒に帰ろう!」 僕と田中は一緒に帰ることにした  歩いている最中、ずっと静かだった田中が口を開いた。 「…アキラ。ちょっといいかな?」 田中が深刻そうな顔で言ってきた。 「どうしたんだよ。改まって」僕が言うと、田中が話し出した。 「ありがとう。それでなんだけど…」 僕は静かに耳を傾けた。 「アキラ、さっきから元気ないよな。」 「…え?」 衝撃な田中の発言に、僕は言葉を失った。  僕の元気がない? 「き、急にどうしたんだよ。僕、いつも元気だよ?」 僕が笑って見せた。 「それが元気がないって言ってんだよ。なにかあったのか?」 田中が痛いところをついてきた。 「実は、僕のお父さんたちが…離婚しそうなんだ。」 僕は全部を田中に話した。本当は黙っていたかったのだが、田中に聞かれてしまったものはしょうがない。 「そ、そうなのか。」 「離婚したら、僕はお父さんと一緒にいることになると思うから、ここから離れることはないと思うんだけど…まぁ、今それが話せたから心が軽くなったよ。ありがとな!じゃ、ばいばい!」 僕は家に走った。 本当は、不安なことはそれだけではない。 僕の親が離婚したら、親がお父さんだけになったら、僕はいまみたいに勉強をしないわけにはいかない。 お父さんに、迷惑をかけるわけにはいけない。 でも、僕は今のこの状態が壊れるのが怖かった。 「おい!待てよアキラ!」 後ろから田中の声がした。 僕は恐る恐る振り返る。 「お前の親父のために、勉強しなきゃいけないんだろ。俺も付き合うぜ。友達だろ?」田中は優しい声でそう言った。 僕は、涙をこらえて言った。 「…っ!ありがとう…!」  次の日の朝、僕は学校を休んだ。お父さんとお母さんが、正式に離婚するらしい。  放課後、僕の家のチャイムが鳴った。 「おじゃましまーす」 たかし、田中、岡田の声だ。 「よっ。アキラ!じゃあさっそく始めるか。」 田中はそう言って僕の部屋の机の上に、学校の教科書、プリント、ドリルをならべ出した。 「な、なにやってんの?てか何すんの?」 「だーかーら。アキラ君の為に僕たちで勉強するの!わかった?」 たかしたちは、田中から僕のお父さんたちの話を聞いて、わざわざ家まで勉強会をしに来てくれたのだ。 「え、わざわざここまで?」 「おう。だってみんなでやったほうが進むじゃん」 田中がニカっと明るい笑顔を見せた。 「…みんなっ!ありがとう!」 僕も、田中に負けないくらいの笑顔で言った。  勉強会が始まり、みんなが一生懸命勉強を始めた。
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