寒空の下で食べてみて?【上】

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寒空の下で食べてみて?【上】

 大分寒くなってきた。とはいえ、ダッフルコートを出したり、お気に入りのカラフルマフラー(赤、白、青、茶色のラインが入ってる/愚弟はウォーリーのほうがまだ慎ましいセンスだと言いやがった)を首に巻いたり、携帯が打ちにくいから手袋はしない派ゆえ、使い捨てカイロを揉むまで、というほどの寒さではない。秋の寒さ、といったところだ。  日が沈むのも、夏場のこのあいだと比べたら圧倒的に早くなったし、学校で部活を終えて帰るときは本当にもう真っ暗。本当、季節が巡るのってあっという間だと思う。  秋風が身にしみるこの季節、テスト期間真っ最中、二日目を終えた放課後。明日で終わるんだ! そう思って意気込み、家に帰ったら勉強が待っているも明日だぜ明日! この呪縛から開放される! そう思ってテンションはそれなりに高かった。そのテンションに身を任せ、私は机に突っ伏している高嶺くんに声をかけたのだ。 「高嶺くうん? 生きてる?」 「…………なんとかな……」  クラスの女子の大半がキャーキャー言いながら、落ち込んでいる? というか、ぐったりしているめずらしい高嶺くんに、熱烈なラブコールを送っていた。「高嶺さま元気出してください!」「高嶺さまー!」私も調子に乗っていってみた。「タカミネサマー! ゲンキダシテー!」 「てめーは俺の機嫌を逆撫でする天才か」  こそっと近づいて高嶺さま呼ばわりしたらこれだ。私はグァシッと両頬を引っつかまれ、引きつり笑いをしている高嶺くんに、頬をつぶされる。「ごめんてば!」
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