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彼女は顔をクシャクシャにして、腹を抱えて爆笑した。クラブで見せる接客用の笑顔なんかじゃなく、明け透けな失笑だった。
「あんたが、泥棒だって。冗談でしょ。そんなことあるわけないじゃない」
僕はなんだか腹がたった。どうでもいい小間使いが主人に歯向かうことなどありえないと、馬鹿にされているようで。
「僕だってお金が欲しいんだ。あれを売ってお金に替えるんだ。クラブ通いで、もう金が無いんだよ」
彼女は必死で笑いをこらえながら、店主に「ねえ、ねえ」と手招きする。
「この人が本当のことを言ってるかどうかって、その宝石でわからないの」
五千円札を受け取り、店主は「お安い御用です」と口角をあげた。文机の上に用紙を置くと、筆ペンで左側には『YES』、右側には『NO』と大きく書く。そして僕の顔に手をかざしながら、振り子を垂らした。
「この方は、本当のことを言っていますか」
黄色い宝石は『YES』の上では微動だにせず、『NO』の上で狂ったように回転を始めた。
「ほら、やっぱり嘘じゃん。正直に言いなさいよ」
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