感謝

1/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 十二月もまもなく終わりが近づいている。  近所の商店街は今やクリスマス一色で、無邪気に喜ぶ子供たちの姿が実にほほえましい。  珍しく昼前まで寝ていた俺は、朝飯を兼ねた少し早い昼飯を自宅で食べていた。  と言っても昨日の残りの肉じゃががメインで、作ったのはせいぜい味噌汁ぐらいだろうか。炊き立ての白米は一種の拘りで、宵越しの飯を冷凍室に入れない主義だ。  茶碗に残っていた米の一粒をきちんと箸先でつまんで口に運ぶ。  八十八回もの手間をかけて農家の方が作ってくれた米である。感謝こそすれど、無駄になどできようはずもない。  幼き日、祖母より叩き込まれた言葉が、感謝の心を忘れるべからずだった。  人は一人では生きてゆけぬ。  必ず誰かの助けを得て生きている。  それ故に、感謝の心を忘れてはいけない。  世の中というのは、時としてそれを忘れがちになる。  助けられたはずなのにそれを斜めに受け止め、あろうことか煽りを返していくことすらあるらしいと聞く。あきれ果てた話だ。  そういう世界だからこそ、争いが堪えないのだろう。  悲しいことだ。  せめて自分だけでも、そうはならぬように気を付けて生きていきたいものだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!