ボードゲーム買いませんか？

　――ある日、家に物売りが来て言った。
　名刺を差し出すよりも先に、開口一番こう言った。

「面白いボードゲームがあるんですよ！　試しにやってみません？」

　何、この人、突然……。
　面倒なので断ったが、私は押しに弱い。
　その特性が災いし、この物売りの男を玄関まで上げてしまった。
　幸いにも、男は無理に奥の部屋まで押し入ろうとはせず、玄関のちょっとしたスペースにボードゲームを広げ始めた。

「人生ゲームはご存知で？」

　男の問いかけに、私は頷いた。
　ボードゲームとしてプレイした記憶よりも、友人の家でテレビゲームとしてプレイした記憶の方が強かったが、大差ないだろう。
　男は笑った。

「じゃあ話が早い。ただし、このゲームは少しブラックですがね」
「ブラック？」
「まあ習うより慣れろ、百聞は一見に如かず、ってね」

　男は厚紙のような折りたたみ式のボードを広げる。それはサイコロ代わりのルーレットが貼り付いた、大きなすごろくのようなものだった。