一章

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 夫婦喧嘩のようなやり取りを見ていると、流れていたクラシック曲が終わりを告げた。少しの間を置いて、ホームルーム開始を告げるチャイムが鳴り響く。 「た、助かった……! おい、早く自分の教室に戻れ! 指導されるぞ!」 「ぐぬぬぬぬ……!」  白桜ルール二つ目、チャイムが鳴り終わるまでに自席へ戻っていなければならない。それを破れば指導となり、最悪の場合は停学や退学処分もあるという。  厳しすぎるという声も聞こえるが、この程度の決まり事も守れないようでは白桜生徒に非ず、という意味も含まれているのだとか。  咲凛は教室を出る間際に和樹を殴り、大きな声で「んじゃ伊織、またね!」と言って走り去った。  ――毎度やかましい女だ。あんな低能と仲良くするんじゃない、阿呆が感染る。  やめろよ、混沌。僕の数少ない友達なんだから、そんな事を言わないでくれ。  ――お前、まさか……奴に気があるのではないだろうな?  ……そんな訳ないでしょ。  僕は痛みで蹲る和樹を見ながら、溜息を漏らした。
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