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ラーメンは塩派
ものわかりのいい女でいたかった。飲み会に行くと言えば笑って送り出し、誕生日を忘れられても忙しいよねと理解のあるふりをした。
背伸びして演じて手に入れたのは、ものわかりのいい女ではなく“都合のいい女”だった。何とも不名誉な称号だ。
何度見てもやりとりはわたしから送った〈今日家来るんだよね?〉の返事がない。横に既読の文字が並んでいるというのに。
「今日とっくに終わったっつーの」
ぽつり、画面の向こうには届かないとわかりきった独り言。金曜日に仕事が終わったら行くと言ったわりに全然連絡が来ないから、確認してみればこれだ。金曜日の時点で飲み会に行きそうだと予想はできたけど、案の定すっぽかされた。
スマホに表示された時刻は2時過ぎ。せめて返信くらいくれても良くない?
もし、朝にでも忙しかったって来たらもう答えは決まっている。忙しいんだね、お疲れ様。心の内は違う。そんなん嘘なんでしょ、ばかにすんなよばーか。それが言えたら、そう言って繋がりを切れたらどれだけいいか。付き合って2年半の時間が邪魔をして、波風すら立てられずに宙ぶらりんのまま。
チューハイの空き缶と、食べ終えたおつまみセットのお皿を片づけようと立ち上がる。チーズやサラミなんかをお腹に入れたところで、満たされなかったらしい。お腹空いた。ちゃんと食べておけば良かったのに、連絡が来るかもしれないと待ってしまった。
「……うわ、何もない」
のろのろと片づけを済ませから冷蔵庫の中を見てげんなりした。昨日のために作っていたおかずだらけだ。悲しいことに出番がなかった。これは朝からちょっとずつ消化していくとして、今は出したくない。違うものが食べたい。棚を探ってみても、お菓子しか出てこなかった。
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