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嫌われ者
1
一機の小型の円盤が地球に着陸しようと準備していた。それも日本である。詳しい街の名は教えられないが、サガオとムイムイの住んでいるところに近いと、だけ言っておこう。
その円盤は全体を銀色で統一し、窓はなかった。ぱっと見て、土星を円盤にしたような感じだ。
円盤は地上を観察した。野球のグランドが一面とテニスコートが二面あって、夏には子供が入れるプールがあった。もちろん定番のブランコや滑り台や砂場もある。
周囲には誰もいなかった。時計は午前十一時を示していた。平日の午前中で子供の姿があるはずがなかった。
円盤は砂場に着陸した。
円盤のてっぺんのハッチが開き、中から一人の宇宙人が現れた。 名前はルブンと言って。全体の色は緑色で、手に水かきがあり、足にはなく、その代わり、尖った爪が特徴的だ。全体にカエルのような印象を受けるが、人間のような目と、二足歩行で移動するので、知的生命体であることは間違いない。
厳密に言うとこの時間、公園に誰もいなかったわけではない。木に囲まれて、木陰のベンチにはおばあさんが腰を下ろしていた。
おばあさんは歩きやすいように、着物ではなく洋服を着ていた。水色のブラウスにベージュのズボンでとても地味だった。老眼鏡のメガネをかけ、杖も右手に握られていた。どこにでもいるおばあさんだ。
もちろんおばあさんはルブンを見ても、驚くことなく、ぼんやりとしていた。
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