嫌われ者

1/37
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

嫌われ者

1  一機の小型の円盤が地球に着陸しようと準備していた。それも日本である。詳しい街の名は教えられないが、サガオとムイムイの住んでいるところに近いと、だけ言っておこう。    その円盤は全体を銀色で統一し、窓はなかった。ぱっと見て、土星を円盤にしたような感じだ。    円盤は地上を観察した。野球のグランドが一面とテニスコートが二面あって、夏には子供が入れるプールがあった。もちろん定番のブランコや滑り台や砂場もある。    周囲には誰もいなかった。時計は午前十一時を示していた。平日の午前中で子供の姿があるはずがなかった。    円盤は砂場に着陸した。    円盤のてっぺんのハッチが開き、中から一人の宇宙人が現れた。a991de52-9939-4900-a331-e821e351ff9f 名前はルブンと言って。全体の色は緑色で、手に水かきがあり、足にはなく、その代わり、尖った爪が特徴的だ。全体にカエルのような印象を受けるが、人間のような目と、二足歩行で移動するので、知的生命体であることは間違いない。    厳密に言うとこの時間、公園に誰もいなかったわけではない。木に囲まれて、木陰のベンチにはおばあさんが腰を下ろしていた。    おばあさんは歩きやすいように、着物ではなく洋服を着ていた。水色のブラウスにベージュのズボンでとても地味だった。老眼鏡のメガネをかけ、杖も右手に握られていた。どこにでもいるおばあさんだ。    もちろんおばあさんはルブンを見ても、驚くことなく、ぼんやりとしていた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!