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何が起きたのか理解できず、石となった男に触れる。硬くて冷たくて、命なんてどこにも感じられない。さっきまで感じていた温かさはすっかり消えて無くなってしまった。
歩いていたのは周囲に木が生い茂る小道で、真っ暗で星しか見えない。静かで、世界の終わりのように感じられた。
しばらく石の前で座りこんでいると、僕を監視していた男や兵士が数人やってきた。僕には足音でわかる。そして遠くから小さな悲鳴のような声も聞こえる。
監視の男が少し離れた場所から、目隠しをするように言うので、僕はおとなしくそれに従った。抵抗する気力なんてない。
城へと戻り、連れていかれたのがいつもとは違う部屋なのだと、見えなくてもわかった。
「目隠しを外せ」
そう言われても本当に外していいのかと躊躇ってしまう。すると、左右は一切見ずに前だけ見るように監視の男に言われる。
恐る恐る布を外すと、目の前には男女の石像があった。二人は幸せそうな顔で何かを覗き込んでいる。
「お前の両親だ」
男は僕に本当のことを話した。
監視の男は母の弟で、僕の叔父らしい。この国の王である祖父がこの力を持つ僕を殺すことに反対したため、僕は今日まで何も知らずに閉じ込められひっそりと育てられたそうだ。
「自分の力を知った上で外に行きたいなら行けばいい」
叔父は苦しそうな声で言う。
石像の二人の視線の先には生まれたての僕がいたのだと簡単に想像できる。
叔父はきっと僕のことを恨んでいるのだろう。
僕は彼から姉を奪ってしまった。更にはあの泥棒の家族から優しい長男を奪ってしまった。
──泥棒は僕だった。
泥棒になるなんて悲劇であり不幸だ。
「本当にその通りだ」
誰にも聞こえないように呟き、僕はまた目隠しをした。
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