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プロローグ
翼(つばさ)の父親は翼がろくに勉強もせず、バンドにうつつをぬかしていることに腹が立って思いっきり怒鳴り散らしていた。
翼の父親「今のお前の仕事は学業だ!なのにいつまでもそうやって遊び呆けて!お前のような奴は我が一族の恥だ!」
翼「おぉ、そうかよ!悪かったな!どうせ俺なんてこの家には必要無いもんな!出てってやるよ!もう二度と帰って来ねぇからな!」
翼の父親「何を生意気なことを抜かして!少しは兄のことを見習ったらどうなんだ!颯(はやて)はもう既にウチの戦力として第一線で活躍してるんだぞ!お前にだって、お前さえその気になればそれなりのポストを用意してやる!」
翼「そういうのが返って俺にはありがた迷惑でしか無いんだよ!」
翼の母親「ちょっと翼!お父さんはあなたのことを心配して…」
バタンッ!
翼はリビングのドアを思いっきり閉めて出ていってしまった。
翼の母親「あなた…何もあそこまで…」
翼の父親「お前がそうやって甘やかすからアイツは付け上がって勝手気ままなことばかりやるんだ!どうせ出て行ったところで何も出来ずすぐに泣きついて来るさ…心配は要らんよ。全く…付けた名前が悪かったな…翼なんて付けたから自由気ままにどこへでも飛んで行ってしまう…」
翼は手当たり次第に大きなバッグに荷物を詰めて、この家を後にする。
翼は行く宛もなく、とりあえずタクシーを拾って夜のネオン煌(きら)めく繁華街をブラブラとさまよう。
これで翼は手持ちの金全てを使い果たしてしまった。
そしてあてもなくボーッと歩いていると、翼の大きなバッグが通りすがりの強面ヤンキー達に当たってしまった。
ヤンキーA「痛っ!おい、兄ちゃん!人にバッグ当てといて詫びも無しかコラ!」
翼「あっ…悪い…」
ヤンキーB「あっ…悪い…じゃねぇよ!この落とし前どう付ける気だよコラ!」
翼「いや…だから悪いって…」
その時たまたま居合わせた女子高生、キラリがこのヤンキー達と翼の間に割って入った。
キラリ「ちょっと待てや!よって集って何絡んでんだ?たかがちょっとバッグが当たっただけだろうが?あぁ!?それで怪我でもしたのか?あぁ!?」
ヤンキーA「そうだよ!今ので腕が折れちまったんだよ!だから慰謝料貰わなきゃ…」
そう言った瞬間ヤンキーはキラリに腕を捻られ関節をキメられてしまった。
ヤンキーA「痛てててててててて……」
ヤンキーB「お…おいお前!何やってんだコラ!」
そう言ってキラリに掴みかかろうとした瞬間、今度はこの男が宙を舞って地面に落下した。
キラリ「そんなに怪我したきゃマジで腕折ったろか?あぁ!?」
ヤンキー達はキラリの信じられない強さに恐れをなして逃げ出してしまった。
先ずはこの翼とキラリの大まかなプロフィールを紹介する。
翼は大学4年、年齢は22才。性格は少しS寄りで好きな娘には意地悪をしたくなる。自由奔放主義で少し気まぐれ、大胆で王子様気質。頭脳は並み以上に優れている。顔立ちはこれまた鼻筋の通った端正なイケメン、長身で180センチを優に超え、スタイルはわりと細身で、まるでモデルのような容姿だ。これだけ全てが揃っているわけだから黙っていても放っておく女はまず居ない。
一方キラリは、高校三年生18才。幼少の頃から格闘技の手ほどきを受け、ケンカの実力は男相手にも負けなしの最恐女子。口が悪く気が強くて、ゴリゴリのヤンキー女子に見えて実は乙女な一面を隠し持ち、白馬の王子様を夢見ている。IQがあまりに低くかなりの勢いで天然記念物!しかし、意外にも優しさ溢れる熱い性格で、友達などからの信頼が厚い一面を持つ。
キラリ「大丈夫か?」
翼「あ…あぁ…てかお前メチャクチャやるな!」
キラリ「何か思い詰めた顔してたけど、気を付けて歩きな…また絡まれるよ」
翼「あぁ…実はさ…俺…行くところが無くって…しかも金も無いから今夜は野宿かなぁって…思ってたりして…」
キラリ「何?どうしたのさ?家出でもした?」
翼「ま、まぁそんなとこかな?」
キラリ「ダチとかは?どっか行くところ無いのか?」
翼「うーん…ちょっと色々訳ありでな…」
キラリ「野宿って…」
翼「だって仕方ないだろ?行く宛が無いんだから…誰か心優しいやつが俺のこと泊めてくれねぇかなぁ…」
キラリはしばらく考えて
キラリ「じゃ…じゃあ…とりあえずウチ来る?」
キラリは完全に翼の心理作戦にハマってしまった。
翼「えっ?そう…だな…。今日はお前ん家にきーめた!」
キラリ「は…はぁ!?何勝手に決めてんだよ!まだ来る?って聞いただけだし…誰も承諾なんてしてねぇし…」
翼「あぁ腹減った…晩飯喰ってないから何か喰わせてくれよ…」
キラリ「い…いやだから…承諾してないって…」
翼「良いからホラ!早く行こうぜ!」
こいつ…なんか初対面とは思えないぐらい図々しいんだけど…ま、いっか…長身イケメン王子ゲット!
今日からお前は私の王子だ!フフフフフッ…
キラリはイケメンには目が無い。心の中で白馬に乗った王子様が舞い降りて来たことに胸踊る思いだった。
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