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「千里ちゃんがお見合いする!?」
その衝撃の事実を知ったのは、年が明けて、三日目の1月3日。千里ちゃんの家にお正月の挨拶も兼ねて遊びに行ったときだった。
千里ちゃんの家のリビングで千里ちゃん母子と私と三人で話していたら、この話が出てきたのだ。
千里ちゃんをお見合いさせようとママが計画していたのは知っていたが、千里ちゃんは嫌がると思っていたのに、どうもお見合いに乗り気らしい。
「クリスマスイブの日に七歩ちゃんに迷惑掛けちゃったでしょ。千里も反省したみたいで、七歩ちゃんにばかりに頼らないためにも、お見合いしたいって。ね、千里」
ママが説明すると、千里ちゃんは頷き、
「うん。七歩ちゃんに迷惑掛けないためにも、結婚したい」
ときっぱり言った。
千里ちゃんから、「結婚したい」なんて言葉が出るなんて!
私なんて、親から婚活しろと言われても、小石川先生とデートしても、「よくわかんない」なんて頼りないこと言ってたのに……
「お見合いっていつ? もう日にちは決まってるの?」
「もうすぐよ! 1月6日!」
「ほんとにもうすぐだし!」
千里ちゃんのママ、行動が早いからなあ。千里ちゃんがお見合いに乗り気だとわかったら即お見合いをセッティングしたに違いない。
「七歩ちゃんはデートしたことあるんだし、千里になにかアドバイスしてあげてちょうだい」
と千里ちゃんのママに言われたが、私が何をアドバイスできるというのか!?
私、人生でデートしたの二回だけ!(三回目のデートは1月7日の予定だ)1月6日に人生初お見合いをする千里ちゃんと、私に差なんてほとんどないじゃないの!
いや、明確に結婚という意思がある千里ちゃんと比べたら、私の方が遅れを取っているのでは……?
「あ、そうそう、お見合いで千里が会話に困ったときのために、小石川先生にこれ作ってもらったの」
千里ちゃんは小さい銀色のキューブを取り出した。
「小石川先生の発明品『アナログ合いの手キューブ・お見合い編』だよ」
キューブのボタンを押すと、「楽しいですね」「素敵ですね」「すごいですね」「わあー!」
「ありがとうございます」「ご趣味はなんですか?」「また会いたいです」という音声が流れてきた。
「小石川先生、また裏で千里ちゃんに手を貸しちゃって!」
私は度肝を抜かれた。
「それだけじゃないの。もし今度のお見合いが上手くいかなかったら、次は小石川先生のお友達を紹介してもらう予定なの。小石川先生のお友達にはB大卒の独身の方がいっぱいいらっしゃるそうだから」
「ええー!?」
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