⑬げんきを出して◯

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⑬げんきを出して◯

「ほら、お前達も遠慮しないでたくさん食べろよ。全部俺の奢りだから」  網の上でじゅうじゅうと音を立てて肉がいい感じに焼けている。  俺は美味そうに見えるけど、他の二人はどうかなと思ってみたら、案の定サラダばかり口にしていた。 「すいませんっ、肉は……あんまり、得意じゃなくて。食べられないワケじゃないんですけど」 「出たな草食系! だったら、飲み物とサラダを頼みまくれ。食い放題なんだから、食べない方が損だ」  恐る恐るマサが手を振って苦笑いしたら、それを見た兵藤は、メニューをマサの顔に押し付けて、頼め頼めと連呼した。  ルイが汗を流しながら、俺に目線を送ってきたので、俺は大丈夫だからと目線で返した。  講義終わり、二人ともバイトがないので珍しく三人で帰っていたら、後ろから肩を叩いてきたのが兵藤だった。  飯はまだかと聞かれたので、はいと答えたら、三人まとめて付いて来いと言われて、兵藤行きつけの焼肉屋に連れてこられた。  さすが社長の息子だけあって、気前よく奢るから食べてくれと言われた。  肉食系グループのトップである兵藤の登場に、ルイとマサは怯えを通り越して石のように固まっていた。 「いつも講義の時、俺ら調子に乗って騒いでいるから、迷惑かけてると思ってな。やってることはアレだが、これだから肉食系はとか思われるのがシャクなんだ。罪滅ぼしみたいなモンだから、好きに食べてくれよ」  どうやら純粋な厚意のつもりのようだが、ルイとマサはロボットみたいな動きでガクガク頷いていた。 「ふ……二人はどういうお知り合いで?」 「ああ、俺が怪我しているところを、落合に助けてもらったんだ」  兵藤の答えを聞いて、ルイからまた余計なことに首を突っ込んでという視線が飛んできた。  その辺の事情を詳しく話さないで欲しいと思いながら、ごまかすようにウーロン茶を口に運んだ。
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