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最初の人生
辺境の地に、慎ましくも由緒正しきソレスタ家の屋敷はあった。
そして今日も景気良く黒煙が上がっている。
?
先ほど何かしらの爆発音があり、羽を休めていた鳥たちが一斉に飛び去って行ったところだ。
「けほっ…こほっ。」
屋敷の一角に建てられた小屋のドアを開けて、咳き込みながら大量の黒い煙と共に、この屋敷の一人娘、アレリー・ソレスタが出て来た。真っ黒になったお手製のゴーグルを外すと、浅い緑色の綺麗な瞳が顔を出す。
ふらふらと歩いて芝生まで来たアレリーは、大きく綺麗な空気を吸って足を広げて座り、黒い煙が収まるのを待った。
また失敗かぁ。
最小量だったんだけどな。
薄い黄緑色の液体に、琥珀色の液体を一滴垂らした。綺麗な波紋と共に液体は変色して行き、次の瞬間、あっという間にアレリーは爆発音と共に黒煙に包まれていた。
「派手にやってるね。」
アレリーの兄。青い瞳のレクシー・ソレスタは庭で本を読んでいたのか、本を片手に小屋のアレリーの横に立っていた。二人は綺麗な栗色の髪をしている。柔らかな髪が緩やかなウェーブを描いていた。
「無事で良かったよ。」
二人は今だにもくもくと黒い煙の出る小屋に目をやった。
「す、すぐに落ち着くから。」
とアレリーは慌てて言う。実験を続けてはいけない。といつ言われるか冷や冷やする。お兄様は比較的認めてくれてる方だった。
「…ならいいけど。
後でちゃんと湯浴みしろよ。」
レクシーは邸宅へと足を進めた。
そんな彼の背中に
「片付けてから入る〜」
とアレリーは言った。
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