47、諦めて、もがいた先に

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 よかった、とユーディットは心から思う。スヴェンがユーディットの幸せを願ってくれたように、ユーディットもまた彼の幸せをずっと願っていた。 (これからも、ずっとあなたの幸せを願っている)  ふとユーディットは、ポケットに違和感を覚えた。気になって取り出すと、白い花びらのブローチが出てきた。別れる時に、スヴェンが贈ってくれたもの。ずっと自室の引き出しに仕舞っていたと思ったけれど、いつの間に……ティアナが遊んでいてポケットに忍ばせたか、――あるいはその時が来たのかもしれない。 「ユーディット!」  名前を呼ばれて、彼女は顔を上げた。視線の先に、ベルンハルトとエアハルトが手を振っている。父親に抱っこされている小さな娘の姿も一緒だ。  ユーディットは微笑んで、今行くわと立ち上がった。  ――僕はどんなに自分が落ちぶれても、汚れても、生きることは諦めたくない。生きていれば、あの時生き抜いてよかったと思える日がいつか必ず訪れると信じている。 「ありがとう、スヴェン」  振り返り、あの日自分を慰めてくれた青年にお礼を述べる。残された白い花びらのブローチが、日の光を受けてきらきらと輝いていた。  おわり
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