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「来ちゃったよ。ハワイ」
熱せられた空港の滑走路に降り立った私は、サングラス越しに南の島の風景を見回した。
入国審査に向かう人たちは、みんな家族連れかカップル、もしくは同性の友達。
一人でいるのは私くらいだ。あきらかに浮いている。
でも、それも想像の範囲内。覚悟の上だし!
私はリュックを背負いなおして、むっと熱せられた空気の中を歩き出した。
私だって、初めはひとりで来る予定ではなかった。
三ヶ月前、彼氏と来るつもりで予約した。でも、一ヶ月前に向こうから別れを告げられた。『他に好きな相手ができた』と。
『だってさ、お前仕事仕事って、会っても疲れた顔してるし。愚痴ばっかりで会ってても楽しくないんだよな』
彼氏の隆平はそう言って、私はただ耳を傾けて、「わかった」とだけ言った。
半年付き合っても終わりがこれだ。だけど、反論できなかった。
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