prologhi

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   あれは、いつのことだっただろうか。もう、随分と昔のことのように思える。  ある夜、寝付かれなかった幼い私は家の窓から見えた“何か”に気を引かれ、そっと庭へ踏み出した。  敷地の外に茂る木々の間で蹲るそれは、こちらに気づき立ち上がる。振り返った生き物の煌々と光る目、その手にはぐったりとした人間の腕が掴まれていた。  地面に横たわる人と同じ形をした“それ”の足元にじわりと広がる血溜まり。とても鮮烈で凄惨な光景のはずなのに、まるで一枚の絵画を見ているようで、なぜか私は“それ”から目が離せなかった。  『アイリス・オルトラーニの手記』より。  
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