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「早希、早く食べなさい!」
まだ寝ぼけ眼の娘を急かすも、まだぼんやりしている。
こうなったら、最も効果的なワードを投げるしかない。
「そんなんじゃ、犬も飼えないわよ?」
「あっ、そうだった!」
今しがた思い出したように、早希がパッと目を覚ます。
すると、凄い勢いで朝ごはんをかきこんでいく。
「よく噛んで食べなさい」
「よく噛んだら飼ってもいいの?」
「そういうことじゃなくて、早希が自分のことをちゃんと出来るようになったらね。それにはまず、もっと早起きしないと。犬の散歩はもっと早いわよ」
「飼ったら早く起きるもん!」
「お母さんにはそうは思えないんだけどー?」
「なに?なんの話?」
のんびりリビングにやってきた夫を、すぐに睨みつける。
「先生ももっと早く起きないと。言い出しっぺなんだから」
「えっ、なんか言ったっけ?」
「犬!」と、2人の声が揃う。
早希にせがまれたわけではないが、私たちは一戸建てを買う流れになっていた。
これ以上、子どもが増えるわけではない。
でもやがて早希も大きくなるし、手狭なマンション暮らしではなく、開放的な一軒家に移り住もうというわけだ。
「飼ったら早く起きるから」
全く同じことを言う父親に、私たち母娘は同時に噴き出した。
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