仲睦まじい恋人

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これは後日談だけど、水族館での私達の様子を見ていた人が社内にいたそうで、営業部内で私達の噂が広がっていくことになる。そこで留まるはずもないので、他の部に広まるのは時間の問題だ。 目立ちたくなくて付き合っていることを内緒にしていたのに、なんということだろう。 親密に見えるように密着した姿が見られていたのかと思うと、普段とのギャップがありすぎて、恥ずかしいどころの話ではない。隣県だから大丈夫だろうと思って油断していた。 ただ、私達を見かけたというのが柴田と同じチームの先輩だったというから、見かけたのは本当に偶然なのか怪しく思う。柴田があらかじめ先輩が家族と水族館に行くことを知っていてもおかしくない。 となると、そもそも柴田にお見合いを勧めてくる取引先のお偉いさんが実在するのかも疑わしいところだ。思えば、恋人がいると言わない理由もハッキリしたものではなかった。 恋人の鉄仮面を引き剥がすため、最初からすべて柴田が仕組んだことである可能性もゼロではない。だとしたら、役者は私ではなく柴田じゃないか。 しかしそのことを柴田に問いただしても真実はわからないだろう。 なんだか腑に落ちないとも思いつつ、以前より好意を少し表に出せるようになった自分が嫌いでなくて彼を責めきれないのが悔しいところだ。 例え彼の手のひらの上で転がされていたとしても、こうなるともう、私は愛しい恋人を許すしかないのだから。 【終】
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