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♪ オープニング
鮮やかに光るカラフルなサイリウム。
一糸乱れぬ軽快でリズミカルな動き。
曲に合わせて飛び交う野太い掛け声。
目の前で繰り広げられる光景に、開いた口が塞がらないどころかそのまま顎が外れて戻らなくなってしまった。いや、正確に言えば踊っている集団にいるたった一人の人物に対して、なのだが。
「…………青柳課長?」
まるで私の小さな呟きを聞き取ったかのように、動きを止めた男性が振り返る。
しっかりと交わった、二人の視線。
ただただ見つめ合ったまま、お互い微動だにしない。
周りの騒がしい音なんてまったく聞こえなかった。
彼と私の間だけ、時間が切り取られてしまったようである。
カランカランカラーン。
真っ青に光るサイリウムが彼の手からスルリと滑り落ちた。床にぶつかったその乾いた音だけが、やけに大きく耳に響き渡った。
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