距離感が

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 放課後、彩斗の図書委員会の手伝いという名目で俺は図書館に来ていた。 「なぁなあ」 「さっちゃんはさーこの小説好き?」  さっちゃんの肩をバシバシ叩きながらそう尋ねてみた。  バッと振り返りこっちを向いた。ってか顔近いな。動いたら鼻が当たりそうな距離だった。 「うん! ちょー好きー。……彩斗っ」 「最後なんて言った?」 「……だから好きって言っただけ、その小説がー」  本当にー、本当にーと言いながら疑いの視線を向けると目があった。  何故か、さっちゃんの顔が真っ赤になっていた。ちょっと怒らせたかも知れない。なんて思いながら顔をまじまじと観察する。  それにしてもーー。 「どうしたの悠真」  この距離だからよく見える。キリッとした目に高い鼻、シュッとした顔をしていることが窺える。 「いつ見てもかっこいい!大好き」   ガバッと抱きついた。俺にもそんな顔が欲しいものだ。    その顔を寄越せという念を込めながら、腕に力を込めて抱きついていた。    さっちゃんは体がでかいから頭を埋められる。  因みにさっちゃんは彩斗の事だ。このガタイで可愛らしいあだ名なのは慣れ半分、からかい半分が理由だ。  体温が高めだし定期的にしたいな、落ち着く。 (さっちゃん?)  そっと目を開け、体を離さずに頭だけを上げて見上げるように顔を覗き込んだ。 「おれも……やっぱ無し」 「ええーなにそれー 好きなの俺だけかよー」  冗談めいて言ってみた。  一瞬顔がパッと赤くなった。 (ふむふむ)  一旦体を離すとなんとも言えない表情を浮かべるさっちゃんの耳元に手のひらをあてがい追い討ちに、お前はどうなの、と言った。   恥ずいだろっと高みの見物をする。  すると、顔を正面に向けられ鼻を掴まれた。  俺がそんなんで効く訳無あっ…… 痛い痛い痛いやめてっ。  「マジタイム、タイム鼻もげるかと思ったわ」  さっちゃんの背中に手を回して叩きながらそう訴えると力を入れるのを止めてごめん、と謝ってきた。  今、完全に力加減ミスったろ。  そう言いたかったが顔を俯かせていて少ししょぼんとしている様に見えた。    落ち込んで所に追い打ちをかける様で申し訳いのでやめとくことにした。 (よしよし)  頭をそーと撫でた。  目を少し細めているし気持ちいいってことかな。  そんなことを考えていたらふと頭によぎった。側から見たら委員会の仕事をしているようには見えないな。と。  けどそんな考えはすぐに吹き飛んだ。   「っはー、可愛い……。マジで付き合おうよ」 「残念だな、女子になってから出直してこい」  と高笑いした。  それが2人の日常
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