真夏の因果律

188/195
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
 古色蒼然とした神社を目にして少しがっかりしている学生たちに、中井は少子高齢化ですからと苦笑する。代々守ってきた神社だが、ここ数年ですっかり手入れが行き届かなくなってしまっているのだ。 「確かに昔はお祭りも盛大に行われていましたね。神輿もありましたし」  桐山が活気のあった頃を知っていますと中井の肩を持つ。ただし、境内のあちこちに雑草が生え、古びた印象のある神社からは想像できないことも理解している。 「どこの田舎も大変ですよね。うちの祖父母の住む町も祭りを維持するのが大変で、手伝えない場合は不参加費なんてものを取られてますよ」  あちこち探検に出掛ける月島も、こういう場所は珍しくないからなとぼやくように言う。それにしても、不参加費を徴収する場所があるとは、それにも驚かされる。その話で桐山は、なるほど自分の祖父母がなかなかここを出ていけなかったわけだと納得する。老人だろうと、人がいなくなることそのものが死活問題になっている場所があるのだ。 「じゃあ、神社があっても伝承が残っていない場所も多いんでしょうね」
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!