◇00. prologue

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◇00. prologue

 ばいばーい、と言って手を振って別れた。  名残惜しくて。いつまでも、いつまでも、あなたのいなくなったプラットフォームで、あなたを乗せた電車が消えていくのを見守っていた。消えて見えなくてもずっと目を凝らして、あなたと一緒の未来を、小さな胸に抱いていた。真冬の寒い夜。チェックのプリーツスカートから覗く素足が寒いはずだけれど、雪国の寒さを忘れさせるほどに……満たされていた。  はずだったのに。  いつの間にか。例えば、靴底がすり減るように。ワイシャツの襟に黄色い染みが残るように。少女時代から見慣れていた若い女優さんがいつの間にか母親役をするようになり、ヒロインの座から自然と降りるように。――あなたとの距離は広がっていった。遠い距離がどんどん遠くなって、わたしたちの間に、しんしんと積もる雪のように、わだかまりを積んでいった。……知らないうちに。気づかないうちに。ずっとずっと深く。  それから。  わたしたちは、違う未来を見据えていた。あなたの望むわたしにはなれなかった。だってそれは。  ――本当のわたしじゃ、なかったんだから。  *
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