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お父様はダリウスさんに拘束されたまま会場の外へと連れていかれてしまった。
それを見送ってから、次はアニーシャ様の居た方へと視線を向ける。けれど、彼女の姿はいつの間にか消えてしまっていた。
割れてしまった仮面を拾い上げて、心の中でありがとうってお礼を伝える。
僕をいつも守ってくれた仮面ともさようならをしないと。
お父様が居なくなったことで騒ぎは落ち着きだし、会場の人達も少しずつパーティーの空気へと戻っていく。
緊迫した空気を取り去るように、和やかな音楽が流れ始めて、それを聴きながらやりきったんだって微かに胸の中に安堵が宿った。
「ルダ頑張ったね」
フェリクス様が僕の頭を撫でてくれて、それにはにかみながらお礼を伝える。
「っ、よかったわ」
ラルも僕の手を取って涙を流しながら喜んでくれた。
そんな2人に囲まれて僕も目尻に涙をためる。
僕がした選択が正しいのかなんて分からない。それでも、僕にとっては大きな1歩になった気がするんだ。
「ありがとうっ」
嬉しさと悲しさと、少しの寂しさが心を満たしていた。
もしも今、8歳の頃の自分に会えたなら、きっと僕は彼を抱きしめて大丈夫だよって言ってあげられる。
僕はもう大丈夫。
フェリクス様とラルの顔を見て、ずっと僕たちを見守ってくれていたオスマン様の姿も視界へと収めた。
僕はもう一人ぼっちじゃない。
それに、ただ泣くしか出来なかった小さな子供でもないから。
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