機械仕掛けの破壊者

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少女は破壊者だった。 歴史を。 文化を。 智慧を。 美を。 破壊する者だった。 かつてこの星に生きたニンゲンが、呪いという負の遺産を残して死に絶えたあと。 ALと呼ばれる人工生命体は、呪いに晒され、抗いながら生きてきた。 呪いはこの星に溢れ、どこからともなく湧き出して、天災の形をとって生命を襲う。 風。 雷。 嵐。 火災。 噴火。 地震。 津波。 洪水。 竜巻。 呪いをまとったそれらが、容赦なく地上を襲う。 彼女は、呪いを止めるために、人の生きた痕跡を破壊して回っていた。 「ニンゲンの生きた文化が、  いつまでも呪いを生み出し続ける」 歴史を。 文化を。 智慧を。 美を。 「人間の生きた証を、破壊しろ。  全てが無に帰るとき、呪いは死に絶える」 それが、彼女にインプットされた教えだった。 ニンゲンの痕跡を消すために動く彼女は、ニンゲンのように美しかった。 いや、ニンゲンが想像し作り上げた神々の彫刻のようですらあった。 白い人工表皮。 銀色の瞳。 唇に色はなく。 煤を含んだ白い髪は、風をあびて翼を広げるようにうねる。 私が彼女と出会ったのも、壊れた遺跡の中だった。
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