4 深まる王女と騎士

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4 深まる王女と騎士

「それでその後体調はどうなの?」  初めての発症から一ヶ月。女王陛下である母親との茶会は久しぶりだった。人払いされた温室で、テーブルには見ているだけでも楽しいお菓子が沢山並んでいる。席はまだあったが、まずはサンドラだけが呼ばれてた所を見ると、王家熱の事を聞きたいのだろうという事は分かりきっていた。 「まだ三回しか起きていません」  その時、後ろでジュールの気配が変わったのが分かった。確かに三回目の発情はジュールにも話していない。最初の発作はジュールの前、そして二回目はピクニックに行った二週間前。そして一昨日が三回目だった。しかし発作は寝支度を済ませた私室に入ってからだった為、薬を飲んでベッドで大人しくしていた。しかし薬が効くまでは本当に辛く、疼く身体を鎮める為に自らの指で二度達した。それもあのピクニックの帰りにジュールから与えられた刺激を思い出し、見様見真似で。なんとなく恥ずかしくて紅茶を口に含むと、母親はふぅーん、と言った。 「ジュールから三回目の報告は受けていないわね?」 「報告? 報告なんてしていたの?!」  とっさに後ろを見ると、ジュールはさも当たり前のように頷いた。 「サンドラ様のお身体の症状は王位に関わる極めて重要な事ですから、陛下に報告致しました」 「怒らないであげて。私がそう頼んだのだから。それで、三回はいつなの?」 「……一昨日」  後ろで繰り返す声がする。ジュールの一昨日の出来事を思い返しているのだろう。そしてぽつりと呟いた。 「それで昨日の朝は寝不足のようなお顔だったのですね」  そこまで分かってしまうのかと赤面していると、母親は溜息を吐いた。 「なぜジュールを呼ばなかったの? 薬があるとはいえ収まるまではかなり苦しかったはずよ。薬は発散と共に使って初めて効果がきちんと表れるのよ」 「そこまでじゃなかったもの。それに呼んだ所で……呼んだ所で特にする事もないもの」 「王家熱を甘く見ているわね。王家熱を発症している時の身体の熱はとても熱いのよ。それを発散せずに放おっておけばいつか身体を悪くしてしまうわ」 「それじゃあどうすればいいのよ!」 「その為にジュールがいるんじゃない。それともジュールでは不満なの? お前の身体の事なのだからね、もし違う相手が良いのならすぐに手配を……」 「陛下! 少しだけサンドラ様とお話させて頂いても宜しいでしょうか」  母親の視線が伺うようにこちらに向く。サンドラは小さく頷くと、母親は席を立った。 「サンドラ、もしジュールを拒むのであれば他の者を付けるだけよ。いいわね?」  いなくなる背中を呆れながら見送っているとジュールが小さく咳払いをする。そしてサンドラの前に膝を突いた。とっさの事に立たせようとするもジュールは全く動かない。肩に触れた手に、熱く大きい手が重なった。驚いて引こうとしてもこちらも完全に捕らえられて抜く事が出来なかった。 「サンドラ様、どうか私をお使い下さい」  言われている意味が分からなくて放心していると、ジュールは顔を真赤にして続けた。 「私にサンドラ様の熱を鎮める名誉をお与え下さいませんか」 「……言っている意味が分かっているの?」 「もちろん最後まではいたしません! それは夫の特権と重々承知しております」 「私と子は作らなくていいという事?」 「子?! 滅相もございませんッ! わたしはただサンドラ様の力になりたいのです」 ーー私の夫になる気はないという事なのね。 「陛下から何か約束されたの? 確実に出世出来る未来とか」 「そんな事はありません! わたしはただ、サンドラ様がまだお相手も決められないまま王家熱に浮かされ、傷つく事だけは……」  勢いよく手を引くと、思いの他するりと抜けて後ろによろけてしまう。とっさに支えられた腰に甘い疼きが走った。 「んッ」 ーーどうして? 発作も起きていないのに!  サンドラは恥ずかしくなってジュールを突き飛ばした。 「今日はもう部屋に戻ります。部屋にいるのだから付いて来なくていいわよ」 「しかし部屋までお送り致します」 「いらないと言っているでしょう!」  その瞬間、がくりと膝から折れた。四度目ともなれば分かる。これは発作が始まったのだと。 「水を……」 「しかし先程陛下も薬だけの服用は危険だと仰っておりました」 「いいから水を寄越しなさい!」  大声を出したせいで温室の入口に待機していた兵士達が何事かと覗き込んでくる。ジュールは舌打ちすると、サンドラをマントで包み、温室を飛び出した。呆気に取られている兵士と侍女達がざわついている。サンドラはジュールに抱えられながら暴れたが、その身体はびくりともしない。 「暴れてもいいですが離す気はありません。それに暴れれば暴れる程、その匂いを撒き散らす事になりますよ」  そう言われてしまえば大人しくしているしかない。ジュールに抱き上げられたまま私室へと向かう間、大勢の人々とすれ違っていく。それでもジュールは前を見たまま大股で堂々と歩いて私室の前で止まった。 「扉を開けて下さい」 「嫌よ。一人で入るから降ろしてちょうだい」 「扉を開けて下さい!」    びくりとしてジュールを見ると、その顔は真剣そのものだった。どうしていいのか迷いながらも、廊下の先から聞こえてきた話し声にとっさに扉を開ける。するとジュールはすぐさま身体を滑り込ませて、中へと入っていった。  部屋は二間になっているが、ジュールは手前の部屋には目もくれずに奥の寝室へと入っていく。そしてようやく足を止めた。 「もういいでしょう! 離して!」  するとジュールはすんなりとベッドに降ろしてくれた。しかし出ていく気配はない。その間にもどんどん身体は熱くなり、膝と膝を擦り合わせたいのを必死で堪えていた。 「お願いだから薬を飲ませて、お願いよ」  目も熱くなってきてしまう。涙が出てきて視界が霞む。縋るようにジュールの服を掴んでいた。 「薬は発散してもまだお辛そうでしたら飲ませて差し上げます」 「まずは薬よ」 「まずは発散です」  そういうとマントを床に落としてベッドに片膝を乗せてくる。びくりと身構えたが、それ以上乗る事はなかった。 「ここに上がる許可を下さい」 「そんなもの、無理よ」 「そんなに私がお嫌ですか?」 「あなたこそ嫌なのでしょう? 無理しなくていいわ。本当に、大丈夫……」  本当は大丈夫ではない。下着が気持ち悪い程に濡れている。ジュールがいなければ今すぐに指で慰めてしまいたいのに、今は身動き一つ取れなかった。ただ片膝を突いて見上げてくるジュールから放たれる色気で目眩がしてしまう。気がつくと、サンドラはジュールに手を伸ばしていた。 「いいわ、上がって」  その手が取られて甲に口づけが落とさる。その瞬間、指先から衝撃が走った。上に伸し掛かってくるジュールも受け入れてしまえばこんなにも安心する。大きな手がまるで壊れ物にでも触れるように優しく耳を撫でていく。熱い口づけがその耳に落とされ、耳朶を喰んでいく。 「ふ、くすぐったい」  その瞬間、耳の穴にくちゅりと卑猥な音が響いた。温かく柔らかい物が耳穴を犯し、耳の後ろを舐め上げ、上も耳たぶも口に含まれる。サンドラの口からは信じられない程の甘い声が漏れた。 「んんぅ、はぁんッ」  辛うじてある理性で口を抑えると、両手はいとも簡単に頭上に縫い留められてしまった。 「我慢しないでください。我慢しない方がきっと楽になれるはずです」  その言葉で下半身からドロリとしたものが流れ出た気がした。堪えられなくて腰が勝手に動き始める。恥ずかしいのにそれはもう止められなかった。ジュールは分かっているはずなのに、そのまま耳を喰んでいた舌を下げ、首筋を舐めて鎖骨へと向かっていく。何度も首と鎖骨を往復される度に、サンドラの口からはもう甘い声しか出なくなっていた。 「もっと声を出して。そうです、お上手ですね」 「やめ、あんッ、そんなに、舐めちゃ」  しかし舌はそのまま下りていき、すぐに上胸へと吸い付いてきた。一気にドレスを降ろされたせいで飛び出した乳房が勢いよく揺れる。ジュールは一瞬息を止めてから慎重に揉みしだくと、その赤く充血した頂きを口に含んだ。その瞬間、サンドラの身体がビクビクと震える。それでもお構いなしのジュールは舌で転がし、舐め、もう片方の手でこりこりと敏感にヒクついている頂きを摘んでくる。もうサンドラは喘ぐしか出来なかった。言葉は何も出てこない。部屋の中を占めているのはジュールが出す水音と、サンドラの甘い声だけだった。 「お願い、ジュール、もうッ」  特に意味はなくもう耐えられないという意味だったが、ジュールは気がついたように乳房から口を離すと、下がっていった。 「すみません、わたしとした事が夢中になっていたようです。サンドラ様の為にしているのに」 「え……?」  何をしようとしているのか分からずに半身を起こすと、ジュールはドレスの裾を上げて顔を埋めた。 「ひッ、ダメよ、出てきて! ジュール!」  しかしジュールの身体を抱き込んだ足は動く事が出来なかった。 「怖がらないで下さい。痛い事はしませんから」  言葉の終わりと共に下着を取られて涼しくなった場所にぬるりとした物が押し当てられた。信じられない事に、舌は何度も陰部を舐めて往復しながらピチャピチャと大きな水音を立てている。ヌルヌルするそれはジュールの唾液だけではなく、自分の身体から出た物だと分かるから余計に恥ずかしくなってしまった。 「一度こちらで達してしまいましょう」  すると舌先が一際刺激の強い部分に押し当たった。 「ふわぁ、それいやぁ!」 「大丈夫です、気持ちよくなるだけですから大丈夫ですよ」  ジュールは安心させるように何度も足を擦ってくる。しかし動く舌はぐにぐにと刺激を強く感じる場所を何度も執拗に舐め上げてくる。舌を尖らせた強い刺激に腰を逃がそうと動くと、ジュールは舌の力を抜いて押し付けるように舐めてくる。するとサンドラの腰も自然とその舌に押し付ける動きになってしまった。 「なるほど……、サンドラ様はこちらの方がお好みなのですね」  スカートの中で呟く声がする。その瞬間、押し付けていた舌の動きが早くなる。そこから達するのはあっという間だった。腰に溜まっていた熱が爆発しそうに一点に集中していく。ジュールの舌の動きを無心で追うようにしていると、突然その熱は爆発しガクガクと腰が痙攣した。   「はあ、あん、はぁ……」  脱力で身体に力が入らないでいると、スカートから出てきたジュールはドレスを脱がせてくれた。そしてサンドラの身体を横にし、コルセットを外し始めた。 「これではお苦しかったですよね。これで、いいのか? いや、こうか……」  悪戦苦闘しながらやっとの事外れたコルセットとドレスを丁寧に畳むと、床の上に置く。そしてやっと落ち着き始めたサンドラを見下げた。そのまま横になり、頭を抱えるようにサンドラの身体を抱き抱える。そして額に口づけを落としてきた。 「まだ身体が熱いですね。お辛いですか?」 「口づけ、唇にはしてくれないの?」  せがんだつもりだったが、ジュールは困ったように笑うだけだった。 「ここも大事な場所ですから、本当に身を預けたいと思う方に取って置いて下さい」 「でも一度目の発作でもしたし、ピクニックの帰りにはジュールからしてくれたわ」 「あ、あれは薬を飲ませる為にです。それに最初の口づけも発作の影響なのですから、したうちには入りませんよ」  その言葉にちくりと胸が痛くなる。身体は隙間なく密着しているのに、心はとても遠くに離れている気がした。その距離を埋めたくてジュールの服を掴んで擦り寄った。その瞬間、思い切り抱き締められる。 「やはり一度では足りませんよね」  背中を撫でられながら次第に手が下に伸びていく。自然に足を開くと、まだしっとりとしている陰部に、ツプンっと指が入り込んできた。とっさに身体が緊張で硬くなる。するとジュールは頭頂部に、額に、頬に口づけを落としてきた。 「今度は先程よりももう少し刺激が強いかも知れません。痛みがあれば止めますから、わたしに身を任せては頂けませんか?」  耳元で、甘い声でそう言われてしまえば断る理由がない。サンドラは同意する意味を込めてジュールの広い背中に身を回した。暖かくて気持ちがいい感覚に次第に意識が遠退いていく。そして上げていた足も次第に閉じていった。 「サンドラ様? 足を……」  ジュールは声を掛けて、サンドラの寝息に気がついた。いつの間にかサンドラは腕の中で眠りに落ちていた。ゆっくりと指を抜くと、頭の下から腕を抜こうとする。しかしがっちりとシャツを掴んでいる手は緩む事なく、離れる事を許してはくれなかった。ジュールは器用になんとか足で毛布を引き上げると、サンドラをすっぽりと包んだ。温かいのか、腕の中のサンドラは小さく微笑むと更に頬ずりをしてくる。抱き締めかけたジュールは自らの腕を後ろに回し、ぐっと拳に力を入れた。
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