三ヶ月と少し

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 どんなに思考を飛ばそうと妙にスルスルと入り込んでくる君の声。何も知らない君は、何も知らないままにこの身の内側を深く傷つけていく。  どうしたら彼女に嫌われないかな、って悩む君に適当なアドバイスをした。その言葉は決して嘘では無かったけれど、自分の本心とは遥かに遠い唯のその他大勢が紡いだものでしかなかった。  今だけは、そんなその他大勢に擬態するしかない。心にもない言葉を無理矢理捻り出して、頭を回して会話をする。  「オマエはそういうんじゃないじゃん」    友人にとっては何よりも嬉しい言葉で、君に傾いている者にとっては何よりも辛い言葉だった。  美しい薔薇には棘がある。月に叢雲、花に嵐。  友達が少ない、と嘯く君が、友達だと認めてくれる。嫌いじゃない、と言葉を投げてくれる。  それだけで、満足していればよかったのに。  欲張ってからではもう遅い。あとは、彼女の影に溶けていくだけだ。
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