内部告発ホットライン:第2回活動報告(その2)

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内部告発ホットライン:第2回活動報告(その2)

(2)内部告発ホットライン ネーミング会議の翌日から内部告発ホットラインの運用が開始した。 運用開始にあたって、総務省が内部告発の方法をアナウンスすることになった。 内部告発の方法は簡単だ。国民が使っているアプリで、内部告発ホットラインを友達登録してメッセージを送るだけだ。 ジャービス王国内に広めるために『採用されたら10万JD貰えるキャンペーン』を始めたら、メッセージが殺到した。うれしいことだ。 メッセージの中からイタズラや偽情報を除いて、優先順位が高いものから検討していく。 内部調査部が忙しくなってきたので、逮捕後に解雇された第13穀物倉庫の5人(ミゲル、スミス、ガブリエル、ロイ、ポール)をアルバイトとして雇うことにした。 内部調査部は人手が足りないのに加えて、不正の手口に詳しいメンバーは必要だ。 彼ら5人もお金が必要だから、俺のオファーを断る理由はない。 こうして、探偵助手が6人になった。探偵事務所としてはそれなりの規模だろう。 国民から送られてきた内部告発について、どの件から取り掛かるかを決める会議が行われた。まず、内部調査部長の俺が方針と選定基準を伝える。 「まず、内部調査を行う対象は、金銭的に算定できるものとします。これは、損害額が計算できない場合は、有罪にならない可能性があるためです。また、民間企業よりも公的機関への調査を優先して下さい。役人の不正を取り締まる方が、国民受けがいいからです。ここまでで、質問がある人はいますか?」と俺は尋ねた。 「経済的な損害額が分からなくても、殺人は優先した方がよくない?」とルイーズが言った。 「もちろん、殺人は対象に含めます。ただ、被害者が富裕層又は公的機関の高官の場合は、優先順位を下げます。犯人を見つけても国民の支持率向上につながりません。なので、殺人の場合も、政府高官に貧困層が殺害されたような事例が優先します。とはいうものの、殺人の場合は警察が対応するので内部調査部は関係ないでしょう。」と俺は伝えた。 「目的は国民の支持率向上。コンセプトは分かった。」ルイーズは言った。 「こちらにメリットがないと、こんな面倒なことをやる意味がないでしょ。『弱気を助け、強気を挫く』が内部調査部の最優先事項です。」と俺はメンバーにミッションを伝えた。 「あの、いいでしょうか?」とスミスが遠慮がちに発言した。 「もちろん。何かな?」と俺はスミスに聞いた。 「実際にこういう告発があるかは別として、容疑者がかなり上のポジション、例えば王族である場合、訴追してもいいのでしょうか?」 「全く問題ありません。最優先で調査しましょう。知っていると思うけど、ジャービス王国では第1王子から第3王子の派閥が後継者争いをしています。私は4番目なので競争に不参加。誰が王位についても、私には関係ありません。むしろ、何か問題が発生して揉めてくれた方が、面白いくらいです。」と俺は言った。 「はあ。」 スミスはどう返答したらいいか、困っているようだ。 こうして、内部調査部での優先事項や進め方が共有された。全て俺の主観だ。メンバーが納得したかどうかは別だが、こういう捜査方針は主観でいいのだ。
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