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結婚式の夜
「リゼット。やっと二人きりになれたね」
緊張してソファに腰かけている私の横に座ったセルジュは、私の顔を覗き込み微笑んだ。
風呂上りで洗いざらしの髪が顔にかかり、式での凛々しく髪を撫で付けた姿よりも幼く見える。
それは遠い昔、私たちが一緒に遊んだ幼い頃と変わらない、私の大好きな彼の笑顔。
「ええセルジュ。これからあなたと同じ部屋で夜を過ごすなんて……ドキドキしてどうかしてしまいそう」
震える私の髪にそっと手を入れ、親指で優しく頬をなでるセルジュ。
「僕だって同じさ。ほら」
もう片方の手で私の手首を掴むと、自分の左胸に持っていった。薄い寝衣の上からでもわかる逞しい胸板。だけどその下で心臓が力強く音を刻んでいる。
「僕のほうこそ、どうにかなっちゃいそうなんだ。君があまりに愛しくて」
彼の顔がそっと近づいて、私たちはキスを交わした。結婚式での誓いのキスがファーストキス。これが人生で二度目のキスだ。
一度顔を離したセルジュは私を切なげに見つめ、今度は私の頭を片手で抱えるようにして強く唇を求めてきた。
「んっ……!」
三度目のキスはとても激しく、何度も角度を変えて重ねられた。
そしてふいに、温かな舌が私の唇を割って入ってくる。最初はおずおずと、やがて力強く。
キスには二種類あるのだと事前に学習してはいたけれど、これがそうなのね……と、妙に冷静に考えながら私はされるがままになっていた。
私の口内を味わい尽くしたセルジュは私を抱き上げ、ベッドに横たえると上衣を脱いだ。ベッドサイドの灯りに照らされたその身体は鍛えられ、いつか見た絵画のように美しい。
「リゼット……愛してる」
覆いかぶさってきた彼の息遣いは少し荒い。私の寝衣は打ち合わせになっていて、ウエストをリボンで結んでいるだけ。スルリと結び目を解かれ、ついに裸を見られてしまうのだと緊張して息を止めて待つ私。
セルジュはそっと寝衣を左右に開くと、しばらく無言で私を見つめていた。
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